内容説明
女中ウィニフレッドは偉大だった。この本は、今世紀初頭の南イングランドで牛飼いの娘として育ち、少女の頃から女中奉公に出て厳しい時代を懸命に生き抜いたある女性の回想記です。ここには、当時のイギリス庶民の暮らし、女中の仕事の辛さ、階級社会の厳しさなどが、あたたかな語り口で克明に綴られています。
目次
1 少女時代(十二番目の子供;ひたすら働く母;父、その仕事;牛追いの暮し;きょうだいたち)
2 平原に生きる(毎日総出で働いた;郵便屋とジプシーが訪問者;学校へ通う)
3 女中の生活(奉公に出される;一シリングのお給金;戦争が始まった)
4 広い世界へ(新しいお屋敷;実らなかった恋;戦争の終わり;結婚―エプロンを脱いで)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
11
ウィニフレッドと言う実在の女性の物語。飾り気のない率直な言葉で淡々と事実を語ると言うことが、こんなにも素晴らしい物語を紡ぎ出す。直前読んだロシアの妖怪譚もそうだった。厳しい労働。給金は雀の涙。冷酷な上流階級。初恋の人は戦死。結婚した相手は戦争神経症。またも貧しい暮らし。でも彼女はユーモアを忘れないし常に前に進み続ける。ビックリしたのはまたハイクレア城登場!先日読了したイーヴリン・ウォー伝でも彼の最初の妻はカーナヴォン家の末裔だった。しかしこの本ではかの家について良い事は語られていない。2019/02/17
めえめえ
9
20世紀初めのイギリス南部。農場労働者の家に生まれたある娘は14歳から女中として働く。著者がその生涯を本人から聞き取った話。当時下働きの家の女の子たちは女中の仕事しか考えられなかったそうです。お屋敷での下働きの人々の仕事や人間関係、第一次世界大戦を挟んだ初恋や結婚、彼女の向上心も大きい。タイタニックの沈没のニュースがあったりで、舞台は英ドラマ「ダウントン・アビー」の時代と全く重なります。2019/07/17
Mana
5
女中の暮らしについてというより、ウィニフレッドという女性の一生について。べつにタイトルに偽りはないけど、「英国メイド マーガレットの回想」みたいなのを予想して読んでいたので、メイドになる前が長かったりしたのがちょっと期待と違った。本書自体は特に可もなく不可もなくって感じだけど、巻末の翻訳者の「ウィニフレッドの母親が強権的に子どもの人生を縛ったのは決して間違いではない。最近は自由の名のもとに子どもを放任しすぎている。」っていう意見には反対。母親が子供のためを思ってしたという点には同意するけど、2017/08/31
ちぃ。@るろうに剣心の影響でユーキャンさまの「日本史」講座受講しています。
4
軽めの読み物であるものの濃厚な味わい。魅力あるオーラルヒストリーでもあり世界観が広がるかと思います。2025/01/10
ともひろかただ
4
イギリスの農村に生まれて、貧しい中に育ち、13歳くらい?から、嫌々ながらメイドとして働いた人が、過去を振り返りながら話す自伝的な内容の昔話。そんな細かいことまでよく覚えてるなあというようなディティールに満ちていたり、ひと口に「メイド」と言っても、その働き方や考え方は本当に人それぞれだと痛感させられるような、血の通ったエピソードが満載です。メイドをやめる歳に、エプロンと帽子を(「まだ使えるのに!」と止められても気にせずに)暖炉だかコンロに投げ入れて燃やしてしまうというシーンは映画のようで印象的。面白かった2015/12/16