内容説明
13世紀初頭から、ドイツ人、デンマーク人、スウェーデン人、ポーランド人、ロシア人の支配を受けてきたエストニア。1919年から20年間、独立を果たすが、やがて独ソ二大国が奏でる運命の旋律がエストニアの人びとの胸を貫いていく。二つの主旋律はコントラストを際立たせつつ、さまざまに交錯しまじりあって、民族の悲劇を生みだすにいたる。1991年8月、ソ連よりの独立を果たしたいま、もっとも困難な問題は、皮肉なことに社会主義のキャッチフレーズであったはずの「働く喜び」を、ソ連支配下でエストニアの人びとが失ってしまったことなのである。小国に押し寄せた苛酷な運命と、その中で民族の尊巌を守ろうとした人たちの努力を、現地取材によって見事に描く。
目次
1 恐怖の一年
2 小さな独立国
3 オビ川のほとりで
4 ドイツ軍がやってきた
5 逃亡者たち
6 「祖国への反逆」
7 「富農」たちのシベリア
8 故国へ
9 独立への歩み
10 1991年8月
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ももまん
1
何人ものエストニア人へのインタビューを元に、ソ連占領下のエストニアやシベリア送りにされたエストニア人がどのようであったかが書かれている。「ソ連支配の恐ろしさ」をひたすらに感じた。2011/02/14
1_k
0
日本ではバルト三国はマイナーなので、このような生の声に基づくエストニア史は非常に貴重。武装SS第20義勇師団に関する体験談を目当てに読んだが、戦後の苦難も実に生々しい。感心したのは、ボリシェビキの支配下にあっても果敢に抵抗を続けているところ。日本人ならばあっさり従うのだろう。非支配の苦難を経験した民族は強い。日本人にその経験がないのはある意味不幸なことだと思う。我々は世界を相手に戦えるだけの実力がありながら、自由と独立は己の血で贖うものという国民意識が、このバルト海の勇敢な小国と比べて余りにも劣っている。2011/10/23
カシュマル
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エストニア独立から、二度目の独立まで。嫌露にならざるを得ない歴史の背景。2025/05/07
ききき
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WW2からのエストニアの歴史を1991年ソ連崩壊の直前にされたインタビューを元に書かれた書籍。エストニアは交易の要所としてバルトドイツ人を始めとして長く大国に支配されてきた土地であった。WW1時に独立を果たした国家が、WW2の戦禍で多くの人がエストニア軍ではなくドイツ軍に入隊したのか気になっていた理由が1939年の相互援助条約を利用した占領後に行われたソ連化(粛清と強制移住)の憎しみからくるソ連より悪魔のほうがマシというものだったと知れた。ソ連崩壊直前とはいえ反ソ連の生々しい声が得られているのがすごい。2019/09/29




