内容説明
本書は、清朝末期、一八六八年一月から一八七〇年九月にかけて政府から派遣された欧米視察団(団長はアメリカ出身の外交官アンソン・バーリンゲーム、中国語名=蒲安臣)の訪問記を、わが国にはじめて紹介したものである。具体的には、随行通訳見習いの張徳彝が書き残した日記風見聞録「欧米環游記」を中心に、使節団の三名から成る欽差大臣の一人である志剛の手による「初使泰西記」を参考にしながら、その全行程を、主に原文注釈の手法を用いて考察したものである。
目次
中国人による西洋見聞記をめぐって―序に代えて
第1章 蒲安臣と使節団
第2章 紫禁城を発つ
第3章 竜旗、華盛頓に翻る
第4章 西洋実学への開眼
第5章 異文化の交差点
第6章 瑞々しい感性
第7章 悲痛な旅路
第8章 蒲安臣使節団の特徴と意義
著者等紹介
阪本英樹[サカモトヒデキ]
1957年11月、中国・天津市生まれ。二十歳まで中国で育った。一歳九ヶ月の時、医療事故によりポリオ(脊髄性灰白質小児マヒ後遺症)にかかり、身体に重度の後遺障害が残る。いまも、車椅子と両松葉杖での生活を強いられている。77年暮れに、「文化大革命」運動後初めて行われた中国の全国規模の統一大学入試試験に参加し、優秀な成績だったにもかかわらず、「身体に障害がある」という理由で入学を拒否される。このことがきっかけとなり、翌78年の秋、治療と進学を目的に、家族とともに両親の故郷である日本に来る。80年春、早稲田大学・第一文学部に入学。87年春、東京大学大学院へ進む。同じ年の夏、中国の南開大学大学院博士課程入試に挑み、合格する。その後、日中両国連合養成の学生として日中間を往復。90年春に東京大学大学院で修士課程を終え、翌91年の夏、南開大学大学院より正式に「歴史学博士」の学位を授けられる。92年の暮れ、ある大手外資系情報機器メーカーに採用され、技術管理事務の仕事に携わり、現在に至る。また、本職のかたわら、企業文化の研究、歴史研究や社会福祉面での国際交流活動など多方面で活躍中
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