内容説明
現実とは何かと鋭く問いかけ、狂気にむしばまれるなかで、詩作によって、あり得ない現実を獲得しようとしたツェラン。晩年に刊行された『息の転換』『糸の太陽たち』、生前既にツェラン自身によって印刷に付された『光輝強迫』、詩人自身の念入りな清書原稿に基づく『声の声部』を収録。
目次
息の転換(一九六七)((あなたは)
(夢に見られないものに) ほか)
糸の太陽たち(一九六八)((瞬間 瞬間)
フランクフルト、九月 ほか)
光輝強追(一九七〇)((聞いていた残り、見ていた残り)
(かれを夜が駆った) ほか)
雪の声部(一九七一)((洗われず、塗られず)
(お前は) ほか)
著者等紹介
中村朝子[ナカムラアサコ]
上智大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うた
8
ツェランの詩は独特な切り詰められ方をしている。翻訳であることも相まって、それそのものが指し示されることはなく、詩の連なりのみからなんとか意図を想像できるところだ。そして翻訳自体の難しさを思わせる反面、日本語の詩としてもちゃんと響いてくるのが不思議だ。2021/08/09
つだしょ
2
妻のジゼルにせよ、長男のエリックにせよ、悲劇。作品は、諦めともなんともいえない語の切り詰め方。読みはじめはわけがわからないが、しだいに何かが引っ掛かってくる。こういう言わなすぎる詩は好きだ。触発されたりもする……。2012/09/03