内容説明
私たちはいかに“使い捨て可能な生”となることを拒否し、自由と平等を目指しうるのか。街頭に集う身体が“語る”言葉を読み解き、現代における民主主義の条件を探る。
目次
序論
第1章 ジェンダー・ポリティクスと現れの権利
第2章 連携する諸身体と街頭の政治
第3章 不安定な生と共生の倫理
第4章 身体の可傷性、連帯の政治
第5章 「私たち人民」―集会の自由に関する諸考察
第6章 悪い生の中で良い生を送ることは可能か
著者等紹介
バトラー,ジュディス[バトラー,ジュディス] [Butler,Judith]
カリフォルニア大学バークレー校教授
佐藤嘉幸[サトウヨシユキ]
京都府生まれ。筑波大学人文社会系准教授。パリ第10大学博士号(哲学)取得。専門は哲学/思想史
清水知子[シミズトモコ]
愛知県生まれ。筑波大学人文社会系准教授。博士(文学)。専門は比較文学/文化理論/メディア文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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awe
9
バトラーのジェンダー理論における鍵概念である行為遂行性と不安定性(プレカリティ)を軸にいかに議会外において人民主権を行使していくかを示した実践的な書。不安定性というのは、新自由主義や保守的なジェンダー規範によって不安定さ(プレカリアスネス)が他の人よりも多く配分されている状態を指す。フェミニストと障害者団体のような、ときに反目し合うようなマイノリティ同士がいかに連帯すべきかという問いは長らく議論が続いているが、ここでバトラーが不安定性の共有という共通項によって連帯するように主張している。これはシャンタル2021/02/20
しゅん
7
パフォーマンスが重要なポイントというのは『ジェンダートラブル』に通じている。集まることの政治性に懐疑的な気持ちを抱いているが、疑いが晴れることはなかった。2020/06/26
まあい
5
不安定性(プレカリティ)は不平等に分配されている。生存可能な生を要求するための民衆集会のなかに、平等が行為化されている。アーレントを批判的に読み込みながら、ジェンダーと不安定性との関連を論じる1章が特に興味深い。「クィアという用語はアイデンティティではなく連携を指し示す」(p.95)。2018/04/17
ヒナコ
4
『戦争の枠組み』とは違い、今作は実際の暴力の実行ではなく、新自由主義によって生存が困難になり、ヘイトクライムによって意見表明から排除される状況というソフトな暴力的状況が考察の対象のようだ。 政治的意見を表明するため、そして「善き生」を送るための前提条件となる人間の依存関係から政治を出発させること。そして、人間が依存や不安定性に曝されることから自由ではない条件から政治を始めること。 アーレントの『人間の条件』と、ブラウンのいかにして民主主義は失われていくのか』への、バトラーなりの返答が本作なのかもしれない。2019/02/28
瀬希瑞 世季子
1
ハイデガーの存在の贈与を第三章に出てくる基盤(インフラストラクチャー)に結びつけてみること。同じ基盤を共有する存在としての他者。そこから共生の倫理を考えてみること。2022/10/05
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