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内容説明
米、小麦、砂糖、トウモロコシ、豆、ジャガイモ、ヤシ油、大麦、キャッサバ、ピーナッツ…人間が生きるうえで欠かすことのできない主食作物が、同時多発的な病原菌や害虫の猛威に襲われたとき、わたしたちの食卓はどうなってしまうのか。大規模なアグリビジネスがもたらした悲劇、作物壊滅の危機に立ち向かう科学者の軌跡をたどりながら、いまわたしたちにできることは何か、考える。
目次
バナナを救え!
アイルランドのジャガイモ飢饉
病原体のパーフェクトストーム
つかの間の逃避
敵の敵は味方
チョコレートテロ
チョコレート生態系のメルトダウン
種子の採掘
包囲戦
緑の革命
ヘンリー・フォードのジャングル
野生はなぜ必要なのか
赤の女王と果てしないレース
ファウラーの箱舟
穀物、銃、砂漠化
洪水に備える
著者等紹介
ダン,ロブ[ダン,ロブ] [Dunn,Rob]
ノースカロライナ州立大学教授。コネティカット大学で博士号取得。専門はエコロジーと進化論
高橋洋[タカハシヒロシ]
1960年生まれ。同志社大学文学部文化学科卒(哲学及び倫理学専攻)。IT企業勤務を経て翻訳家。科学系の翻訳書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 3件/全3件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
137
ジャガイモの原産地ペルーのインディオは、多種多様なイモを同時栽培するという。疫病が広がっても最低限の被害で済ませるための知恵だが、儲けと効率化を最優先する現代人は反対に最も多収穫な品種のみ栽培を広げた。結果アイルランドの飢饉を招き、バナナやキャッサバでも同じ過ちを繰り返した。カカオ農園主の権力に打撃を与えるため故意に伝染病が移入され、工業製品と同じやり方でゴムノキの生産を図るなど人の愚かさは果てしない。多様性を守るため科学者は種子の保存に懸命になるが、それを政治は平然と踏みにじる。人を滅ぼすのは人なのか。2022/02/26
榊原 香織
69
南米のバナナはクローンだから、病原菌に弱い。戦前の甘いグロスミッチェルは全滅、今あるのはキャベンディッシュ。 (台湾バナナとかはたぶん違う) ノルウェー、スピッツベルゲン島の種子バンクはタネの箱舟2023/04/29
Sakie
28
「ファーマゲドン」が工業型農業による環境汚染を指摘したのに対し、本書は工業型農業の特徴である単一栽培による作物の多様性の衰退、伝統農業とその累積された知恵の喪失を指摘する。『多様性の中心地』とはその種が栄え進化する環境がある原産地を指す。原産地でこそ植物は近縁野生種と交配し多様化できるのに、その土地はえてして経済的に貧しく、大資本農場に侵略されている。ここでも資本主義が未来の資源を食い潰している現実がある。動植物の多様性喪失は人類の食物の多様性喪失を意味する。気候変動を免れない今こそ、多様性が必要なのに。2019/02/13
Miyoshi Hirotaka
27
文明の進歩につれ食べ物の種類は減ってきた。ファストフードや嗜好品の原材料は単一化した。わが国でも多種多様な米を同時栽培する習慣は同一種類の栽培に置き換わった。このため人類の食は気候変動や病害虫に非常に弱くなった。また、それを利用した悪意ある集団の農業テロにより産業が壊滅する事態を招くようにもなった。大航海時代にもたらされた原種の移動と大規模な単一栽培は富を蓄積し、地球人口を増大させたが、食糧生産システムは脆弱なものになった。原種を国際的に保護し、備蓄すること、食の多様性を図ることが食糧危機を回避する手段。2022/06/08
俊介
24
なぜ、生物多様性が必要なのか。深い問題だが、その答えの一つが、はっきりと示されている好著。19世紀にアイルランドで起こったジャガイモ飢饉を始めとして、それ以降に起こった食糧危機の歴史。浮き彫りになるのは、多様性を欠いた、危うき現代・未来の人類の姿。基本テーマは食だが、問われるのはより幅広い、我々の「自然観」だ。生産過程の「見えない化」が進む現代、まるで農作物が工業製品かのように捉えられ、我々の自然に対する感覚は、麻痺する。多様性を守るために奮闘してきた科学者の姿を通して、危機を回避するための糸口を、探る。2022/02/16