内容説明
優れた日本建築の佇いや風情は、一見よそよそしい。しかしあっさりと感じ取られるものほど、空間の使い勝手と全体のせめぎ合いが、細部の痕跡や空間の構成形式のなかに表現されている。その表現と豊かさを抒情的かつ大胆に読みなおす、唯一無二の建築論。
目次
1 日本古代文化の骨格(法隆寺;薬師寺東搭;唐招提寺)
2 都市の自然と聖地(上賀茂神社;下鴨神社)
3 救済と形態の力(醍醐寺五重塔;平等院鳳凰堂;三仏寺奥院投入堂;宇治上神社)
4 思想としての空間の構築(浄土寺浄土堂;太山寺;東大寺南大門・二月堂;慈照寺東求堂)
5 中世から近世へ―時空の交錯(園城寺勧学院宮殿;園城寺光浄院客殿;西本願寺白書院・北能舞台 ほか)
6 スキ‐スサビ‐サビの展開―美の命運(待庵;真珠庵庭玉軒;高台寺傘亭・時雨亭 ほか)
7 虚実のあわい(狐篷庵忘筌;円通寺;角屋)
著者等紹介
中川武[ナカガワタケシ]
1944年生まれ。工学博士、建築史家。専門は比較建築史、アジア古代建築保存修復。2015年3月に早稲田大学理工学部教授を退任。博物館明治村館長、日本国政府アンコール遺跡救済チーム団長、ヴェトナム・フエ王宮都市の国際調査研究委員。主な受賞に文部科学大臣科学技術部門表彰、日本建築学会賞(業績賞)、早稲田大学大隈学術記念褒賞、カンボジア・サハメトレイ王国勲章、ヴェトナム政府友好勲章など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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林克也
3
宗教と建築との関係や茶の湯と建築との関係など、“建築”の成り立つバックグランドと、それを実現するための技術的解法がわかり、その場で聴講している、とまではいかないが、興味深く読めた。ただ、図や写真がもっと欲しい。その建築を何度も見て解っている人の講義(文章)ゆえに、それを見たことも無い人にとってはどうしてもイメージが湧きにくかった。 「東大寺の中にもものすごく良い風景がある。大仏殿の向こうの奈良女子大学の方角からこの二月堂を見ると、本当に素晴らしく感じられるだろう。」これは気づかなかった。 2015/11/17
ティス@考える豚
2
美・技術・思想ということでとてもふわふわとしたテーマが目次に並ぶがとても良かったと思う。難しい言葉が用いられており初級者向けとは言い難い不親切な本だが、こんな本はそれでいいのだろう。本職の方が読む方がいいのかもしれない。西本願寺黒書院の項目はただ絶賛のみをしていてそれだけほかの項目より思い入れがある場所なのだろうと思った。2016/02/19