内容説明
「ここからは、あなたが見える」(「ラ・カンパネラ」)―地面に近しい動物の目線で、自然を、人間を、ことばを虚心に見つめることから、さわがしくもやさしくいとおしい寓話的世界が広がっていく―。平易なことばで織りなされた18の詩編からなる小宇宙。第19回中原中也賞受賞。
目次
指差すことができない
ラ・カンパネラ
ワンダーフォーゲル
森がある
適切な速度で進む船
ここにないものについての感情
らくだは苦もなく砂丘になる
夜が静かで困ってしまう
知らない人と話す
スナックみや子〔ほか〕
著者等紹介
大崎清夏[オオサキサヤカ]
1982年生まれ。2007年頃詩の投稿を始める。2011年ユリイカの新人に選ばれる(伊藤比呂美・選)。2012年第一詩集『地面』(私家版)で第17回中原中也賞最終候補に。2013年第二詩集『指差すことができない』(アナグマ社)を発行。2014年同詩集にて第19回中原中也賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぐうぐう
25
詩人特有のまなざしというものがある。現実を肯定していようが否定していようが、そのまなざしは私達読者の見たことのない、気付くことのなかった光景から導かれている(「光景」は、そのまま「言葉』に置き換えられる)。気付きは当然詩人のほうが先で、詩人の中で気付いた結論をゴールにして詩は書かれている。けれど、大崎清夏の詩は、そうではない気がする。書きながら気付いていく、そんなアドリブ感は、読みながら気付いていく読者の隣を歩いているような錯覚を起こさせる。(つづく)2018/08/29
新田新一
13
私の好きな詩人伊藤比呂美さんが推薦している詩人だったので、読んでみました。他の日本の現代詩と同じように難しいものが多く、読みながら戸惑うことが多かったです。表題作が一番心に響きました。「ここのひとはみんなおともだち/ 海の神様にお祈りするとき/神様の顔がはっきり見える/その顔は波や泡でできていて/指差すことができない」謎めいた表現で書かれていますが、明るさとおおらかさを感じます。日本人の感性の底にあるアニミズムが、現代的に表現されていると思います。2024/03/17
mer
11
「言葉は人間が最初に被る震災です」という言葉に衝撃を受けた。誰かの何気ない一言で「震える」という経験は多くの人が一度は経験しているのではないか。震えるだけならまだしも、津波(涙が出ること)にのまれてしまうと復興(心の傷を癒すこと)するまでに膨大な時間がかかる。言葉で人は簡単に殺せる。言葉は恐ろしい。言葉で人を救うこともできる。言葉は素晴らしい。2020/12/05
Moeko Matsuda
5
【あくまでメモ】知的でさらさらとした作品たち。引用等が多いのでどんどん気になる本が増えていくのが、また良いところ。これまで読んできた詩集とはちょっと違った世界観かなぁと感じる。とても好きだが、自分には少し難しいようにも感じる。表題作の「指差すことができない」と、「スナックみや子」「テンペルホーフ主義宣言」「四つの動物園の話」が特にお気に入り。2022/08/21
sk
2
自由自在な想像力が素晴らしい。2020/01/05