内容説明
聖書の失楽園以来、庭園は人びとにとって尽きせぬ憧れの対象としてあり続け、またその占める領野は果てしもなく広がり続ける。天上の楽園としての天国の表象や、ギリシア・ローマの神話の園、貴族たちのルネサンス庭園から世俗化した市民の庭まで、庭園を構成する要素である、門、囲い、水・泉、迷宮、洞窟、庭師、花・樹木・果実などを手がかりに、美術作品を通じ古今の庭園を逍遙、そこに堆積した意味の地層を掘り起こす。庭園論にして西欧文明論。図版多数収載。
目次
地上の楽園としての庭園
門―楽園の門・天国の門・地獄の門
囲うこと(公の世界の場合;私の世界の場合)
水と泉―命と権力のシンボル
迷宮―惑わしの空間・導きの糸
洞窟(自然と芸術の融合としてのルネサンス洞窟;古代とキリスト教中世)
庭師―癒しの場所を手入れする者
花・樹木・果実―小プリニウスからモネまで
著者等紹介
小林頼子[コバヤシヨリコ]
1948年生まれ。1982‐85年ユトレヒト大学美術史研究所留学。1987年慶應義塾大学大学院博士課程修了。専門は17世紀オランダ美術、日蘭美術交流。現在、目白大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヒラタ
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小林先生といえばフェルメール、講演会も聞きに行きその飾らぬお人柄をとても好ましく思ったことを思い出します。 エデンの園からモネの庭まで、閉ざされた庭や迷宮。庭園は現実でも絵画でも沢山存在していたのに背景として見過ごしていたような、庭のあり方そのものには意識してみてはいませんでした、以前読んだ本からの知識として、マリアの純潔の象徴としての囲まれた庭はしっておりましたが、オランダ人の強い愛郷心の表れである囲まれた庭、アリアドネの糸を想起させるシャルトルの舗床迷宮など興味深く読みました。2014/02/19