内容説明
生命科学、医学、社会学、経済学、そして、政治学。あらゆる知の最新の達成を渉猟し、法・政治・制度といった現実の問題を真正面から考え続けてきた哲学者が、研ぎ澄まされた言葉で「生」を描きだす。
目次
第1部 身体/肉体(魂を探して―バイタル・サインとメカニカル・シグナル;来たるべき民衆―科学と芸術のポテンシャル;傷の感覚、肉の感覚;静かな生活)
第2部 制度/人生(生殖技術の善用のために;性・生殖・次世代育成力;社会構築主義における批判と臨床;病苦のエコノミーへ向けて;病苦、そして健康の影―医療福祉的理性批判に向けて)
第3部 理論/思想(二つの生権力―ホモ・サケルと怪物;受肉の善用のための知識―生命倫理批判序説;脳のエクリチュール―デリダとコネクショニズム;余剰と余白の生政治)
著者等紹介
小泉義之[コイズミヨシユキ]
1954年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程退学。現在、立命館大学大学院先端総合学術研究科教授(哲学・倫理学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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msykst
13
名著。何回読んでもやっぱり凄い。経験を生化学反応に閉じ込め、制度によって身体のあり様を規定し、心理化や道徳化によって病の問題を単なる選択問題に矮小化する、そうした生政治的権力を厳格に理論的に批判しながら、肉体の「力」を徹底してラディカルに肯定する。「生成変化を通して自己保存しながら自己破壊に向かうもの」(p.359)としての生物のあり様を、日常の言語で如何に記述できるか。生と病を巡る理論や語彙が如何に貧困か。「病」の肯定や不随意運動の話、劣性社会論等々、小泉の仕事がどのように一貫しているのかよく分かる。2025/04/17
まあい
6
間違いなく、現代において「生きる」ということを考えるうえでの必読書だろう。「人間が死ぬこと、他ならぬこの私が死ぬことに、とりたてて思考を促すような謎がある気がしないのである。そのことよりも、私には、生きていることのほうが、よほど不思議であったし、いまでもそうである」(p7)2016/01/12