内容説明
物語のテクストは、多様で自由な「読み」に開かれているのだろうか?読者に無限の解釈を許すのだろうか?記号・意味・テクストをめぐるさまざまな概念を精緻に定義し、物語のメカニズムを詳細に分析する、エーコの記号論の代表作。
目次
1 テクストと百科辞典
2 パース―テクスト共同作業の記号過程的基礎
3 モデル読者
4 テクスト共同作業の諸レベル
5 言述構造
6 物語構造
7 予想と推考散策
8 世界構造
9 行為項構造とイデオロギー構造
10 適用―『歯の商人』
11 適用―『とてもパリ的なドラマ』
付録
著者等紹介
エーコ,ウンベルト[エーコ,ウンベルト][Eco,Umberto]
1932年生まれ。世界的な記号論学者として活躍。現代イタリアを代表する文学者
篠原資明[シノハラモトアキ]
1950年生まれ。京都大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roughfractus02
7
「pが起こった」と「pが起こらなかった」の間にどんな関係があるのか?トマス・アクィナスの言葉とボルヘスの物語に、可能的過去に神の不寛容と寛容を見る本書は、物語を可能世界論から捉えようとする。が、論理学の可能世界論と異なり、物語はどんな解釈でも許容するのではなく、モデル読者とモデル作者とテクストの意図の3者が探求する合意の範囲で作品を開いたものにすると捉える。C・S・パースの実在を直接指示する直接的対象と心が生み出す力とその動きを促す力動的(dynamic)対象という分類に沿って、著者は物語を後者に配する。2019/01/17
む
1
読書とは常に次の展開の先読み・予測を誘発しており、物語とは読者が作り出すそうした可能世界と並行・対立する。最後の『とてもパリ的な物語』(アルフォンス・アレー)読解で示されるのは、読者の期待をよりどころにしながらもそれを裏切ることによって、読者の期待そのものを顕在化する語りの狙い。 ただし逆に言えば、この読者の期待なしには、物語の不合理性はその不合理性としての意味を持ちえない。やたら記号が出てくるが、躓かないためにはほどほどに読み飛ばす他ない。2022/12/22