内容説明
個人の自由、他者との共存、新たな共同性は、いかにして可能か。「いま・ここ」の現象の襞を読み取り、他者への通路を見出す。メルロ=ポンティの哲学的企てをその深部でとらえ、デリダやフーコー、バリバール、ランシエール、ナンシー、ラクー=ラバルトらとともに、「共同性なき共同体」あるいは「肉の共同体」という新たな問いの地平を切り開く哲学思想の新境位。
目次
新たな共同性を求めて
1 政治的なものの現象学―メルロ=ポンティを読む(コミュニオンからコミュニケーションへ;自由の両義性 ほか)
2 哲学的なものと政治的なもの(政治的なもの「から」の引退―ナンシー+ラクー=ラバルトと「政治的なものについての哲学的研究センター」;「政治」はデモスとともに―ランシエールと「政治」の哲学 ほか)
3 隷属知の解放のために(沈黙から言表への「中継器」として―「監獄情報グループ」とフーコー;移民・市民権・歓待―サン・パピエの運動とバリバール、デリダ ほか)
4 「肉の共同体」へ(全体主義・ヒューマニズム・共同体―サルトルと「余計者」の共同体;存在論としてのコミュニズム―ナンシーと「有限なる現前性のコミュニズム」 ほか)
著者等紹介
松葉祥一[マツバショウイチ]
1955年生まれ。同志社大学大学院博士課程単位取得退学。パリ第8大学大学院博士課程単位取得退学。現在、神戸市看護大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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D.Okada
4
フランス現代思想がメイン。他者性、自由の両義性、共同体など、現代を考える上で重要な要素を押さえた哲学思想の本。「哲学と政治の伝統的関係から身を引くことによって、『哲学の権威を否否定する』と同時に『政治的なものの閉域を認識する』という役割」すなわち政治的なもの〔から〕の引退に論じた章や、自由主義における普遍主義と暴力の結びつきについて論じた章はとても興味深かった。2011/02/25
koillmatic
1
「肉の共同体」「共同性なき共同体」など、難民/移民問題をはじめとする国際政治の問題の解決への糸口となりうるような概念が示されており、混迷を極める現代における哲学の使命というものの、ひとつの答えを読みとることが、できるかもしれません。2010/10/25
amanon
0
個人的な話で申し訳ないが、著者は僕が学生時代大変お世話になった方。しかし、僕は著者の良い読者ではなかった。しかし、この著書は何となし気になって読む気になったが、その理解の程はかなり怪しいとは言え、予想以上に示唆に富む内容であった。ただ、僕自身は著者が乗り越えるべき対象とみなしているであろう、カトリック教会に属する信者であり、そしてカトリック的な共同体を理想的なあり方とまではしないにしても、恐らくその中に一生身を置になるだろう。そういう者にとって著者のいう新たな共同体は、いかなる関係になりうるか?2011/05/29