内容説明
精神と器官、感性と理性、これらの饗宴が開かれる熱く静謐な処で、心と心臓とが切り開かれてゆく、九年ぶりの新詩集。
目次
定義
算数に支配される心臓を鷲掴みしたことがありますか
昼寝中の心臓を起こすことほど背中に氷が垂れることはない
終点のない地下鉄のほの暗さに血液は偽物として流れ出す
百年が一瞬に燃え尽きた心臓の灰が撒かれている阿蘇の艸千里
雷鳴が轟く場所には虫けらもいない心臓手術
冷たいのはそこに血が通っていないから
血に染まった手を磨いても神にはなれない
神の手とかなんとか騒ぐな仏の産物だ
不死は厳密には信心のことであり、心臓は止まった〔ほか〕
著者等紹介
宋敏〓[ソンミンホ]
1963年、名古屋市生まれ。1989年、名古屋大学医学部卒業。詩人、精神科医、心臓血管外科医。詩集に『ブルックリン』(青土社、1997年、中原中也賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なかたつ
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第14回小野十三郎賞を受賞した著作。著者による9年ぶりの詩集。この方のお名前を拝聴したのは、飯島耕一との繋がりだ。ユリイカに投稿してた頃、飯島が選者か何かをしていたそうで、それ以降も繋がりがあったそうだ。著者は、医者であり、その経験が全面的に詩集に表れている。冒頭の「定義」という詩。心と心臓の対比。心は胸の奥にあるのか、それとも、今や脳と同義語なのであろうか。心の病気は、何をすれば治るのだろうか。そもそも治すものなのか。何をもって心の病気と言うのだろうか。内臓を見たこともなく、自らの所有物だと言えるのか。2013/07/15