内容説明
「快楽」だけで殺人に走れる人類は、破壊された本能の持ち主なのか。テロリズムからセックス殺人まで、残虐行為の背後にひそむ「人間」存在の深層を抉る。
目次
第1部 大量殺人の時代(性犯罪の出現;反乱;マフィア;政治暴力;犯罪の爆発;現実感覚)
第2部 人間の暴力の心理学(暴力の隠れたパターン;激発人間;自己破壊の心理学;人間の進化;意識の功罪)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Smith, Ordinary. Person.
1
下巻は1970年代までの近現代の犯罪史を俯瞰する。そして続く第2部では、犯罪行為の核心である、人を犯罪へと走らせる「暴力の心理」について、これまでの仮説を紹介しつつ、人が暴力に走る過程を考察していく。そのパターンは複数あるが、共通している、つまり歴史を通して変わらないのは、犯罪者とは己の欲望や感情を抑え律しきれない人、だということだ。正義感も暴走すれば暴力活動の動機となるように。逆に言えば、犯罪の抑止とは欲望や感情を制御する術を身に着けた人を増やすことだ。その方法については本書が参考になるかもしれない。2023/05/27
tan_keikei
0
理論部分の右脳左脳論のところはちょっと留保せねばなりませんが、古代から行われ続けている人類の残虐行為の収集と考察のボリュームに圧倒されます。「自己破壊の心理学」の章のカール・パンズラムのエピソードが出色。悪辣で手の付けられないパンズラムを信頼し変えようとした刑務所長を脱獄したことで裏切り、彼からも見捨てられます。彼を裏切った自己嫌悪からパンズラムは更に自暴自棄になり罪を重ねるのですが、そのパンズラムを改心させるのが……これは運命の皮肉であり悲劇ですなあ。2014/01/01
Motonari
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下巻やっと読み終わりました。近代以降性犯罪が登場し、植民地支配や国家間の争いによる反乱&テロの発生、マフィアなどの公然犯罪組織の誕生、ナチやスターリンの政治暴力、そして第二次世界大戦後の動機なき犯罪の爆発的発生へと人類の犯罪の歴史は続きます。 第二章では、動物の中で唯一同種で殺しあう人類の犯罪的本質を進化の過程からかなり念入りに考察していますが、この種の問題の常でなかなかスッキリした結論はでません。ただ30年前に書かれたこの本のキーワード「混みすぎのストレス」「魔術的思考」「確信人間」「社会的連帯感の欠如2013/02/22