内容説明
躍動する身体、疾走する恋人たち、檻としての家、黒社会vs警察、中国返還…、街角の渾沌が息づく香港映画。発熱する都市の魅力とともに、目くるめく映像の銀河へと誘う、情熱的な香港映画礼賛。
目次
第1章 香港映画は屋上をめざす
第2章 無防備都市、香港
第3章 走れ!香港恋愛映画
第4章 香港映画、一家団欒
第5章 魅惑の部屋―ウォンカーウァイ(王家衛)の空間
第6章 さらば友よ―ジョンウー(呉宇森)試論
第7章 街角の笑劇―ウォンジン(王晶)とチャウシンチー(周星馳)
第8章 異星の客―香港映画はいかにハリウッドを夢見るのか
著者等紹介
野崎歓[ノザキカン]
1959年生まれ。翻訳家、エッセイスト。東京大学大学院総合文化研究科助教授。専門はフランス文学、映画論。主な著書は次の通り。『ジャン・ルノワール 越境する映画』青土社、2001(第23回サントリー学芸賞受賞)などがある
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感想・レビュー
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makoto018
9
97年の中国返還後、香港映画は変容を迎えた。日本のファンから見て、中国大陸市場を意識した大作や道徳的映画が増えた印象だし、そもそも「香港映画」なのかも不明である。香港映画の魅力は猥雑でローカルだが濃厚で不思議な魅力があった。「玉石混交」、「量が質をつくる」を地で行く「らしさ」が薄まっているのでは。本書は、仏文学者による05年出版の香港映画論。返還前後の文化や風俗、歴史などを踏まえて論じられており、ウォン・カーウァイやジョン・ウー、チャウ・シンチーなどへの映画評からも新鮮な視点や香港映画への愛が感じられる。2022/12/15
ロックスターKJ
2
評価:★★★★☆ 4点 野崎さんの香港映画愛にあふれた内容で面白かった。90年代の香港映画は、なぜあれだけの傑作群を生み出せたのかについて、あらためて思いを巡らすことができた。ウォン・カーウァイ、ジョン・ウー、ウォンジンとチャウ・シンチーの章がよかった。この頃の作品は、有名な作品以外は配信でもなかなか見つからないのが現状だし、中古DVDでもいいから捜していきたいものだ。2024/07/04
fritzng4
1
まだ見ぬ香港映画の混沌の只中に引きずり込まれそうな、魅惑にみちた一冊。ハリウッドに進出した香港映画界の巨匠たち三人が期せずして?ヴァンダムの映画を撮っているという興味深い事実。2014/04/24