内容説明
規範的な親族関係の言説が私たちの生から奪うものは何か。西洋古典劇『アンティゴネー』に、ポスト産業社会の家族形態の火急の課題を見出し、親密な生の領域の倫理を根源的に問う、現代思想/セクシュアリティ研究の到達点。
目次
第1章 アンティゴネーの主張
第2章 書かれない法、逸脱する伝達
第3章 乱交的服従
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mstr_kk
9
10年ぶりくらいで再読。バトラーの主張自体は、「アンティゴネーは社会の外側にいて社会と対立しているのではなく、社会の中で社会の言語を使って社会を攪乱している。だからこそ、社会を変える可能性がある」というあっけないほど明快なものですが、それを示すテキスト実践がやはりとんでもなく面白いです。言語行為論をやり脱構築をやり、構造主義と構造主義的精神分析の根本的な弱点を身も蓋もなくぶっ叩き、アクチュアルな社会問題を扱う。このエネルギーをこそ見習いたいものです。ただ、絶対もっとわかりやすく書けたはず……。2016/12/03
またの名
4
ハリポタ原作者さえもがLGBT差別してるとよく言われるので対応しようと頑張って読んでるジェンダー理論家の、風変わりな文学論。自分達の目的を通すため国家の力を求める最近のフェミニストと古代悲劇主人公アンティゴネは逆に思えたなどと、冒頭から不穏なトラブルを招きかねない挑発で開始。呪われた父親オイディプスから父の娘かつ妹として産まれ兄が甥にもなる乱交的関係を生きるアンティゴネは、国家権力に反抗し「女にも劣る」「男っぽい」無法者だと非難される。ヘーゲルやラカンが語った法とは異なる、法以前の死せる根源的な法の形象。2023/10/28
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3
ある体制をその内部で攪乱していくことに変革の可能性を見出だす、という意味では、『ジェンダー・トラブル』と同じことを言っているのだと思う。2017/03/11
全滅しました
1
エディプスによる預言(呪い=言葉)に導かれて行動するアンティゴネーの運命。ヘーゲルが近親相姦(家族)と掟(国家)の、ラカンが死の欲動と象徴界(主体の条件)の弁証法としてそれぞれ解釈するが、バトラーはアンティゴネーをエディプス型とは異なる関係性の切り結び、つまり現行の精神分析の基盤を切り崩し、書き直す可能性をもった話として再読しようと四苦八苦している。正直、彼女の構想するオルタナが明示されているわけではないが(3節の「メランコリー」やアガンベン絡みの話もネタどまり)、アンティゴネーの読み解きが奇麗。2013/10/11
ふたば
1
内容をすっかり忘れていたので再読。「アンティゴネーは生きることが出来るのか?国家とフェミニズムの関係を再考する際のアンティゴネーの政治的意味とは?」ヘーゲルやラカンの読みを引き、また批判しながらソポクレースのアンティゴネー達、そして彼女にまつわる親族関係を見つめ分析し、親族関係の新しい形を探る書。たしかに言われてみればオイディプースの家庭ってとってもクィアだ。内容を十全に理解できたとはとても言えないけれど、たくさんインスピレーションを貰えた。2012/09/23