内容説明
現代の典型的な病い、それは現実順応型の狂気である。両親の偽りの「愛」に服従した子供は、内面性を失って外面的「現実」「正常さ」に固執し、「愛」の名の下に破壊をもたらす―精神分析理論と豊富な臨床経験に基づき、ヒットラーからレーガンに至る現代史上の人物や文学作品に例をとりつつ、現代社会の矛盾とその克服法を提示する。
目次
1 現実の名による現実の拒否
2 人間の破壊性の起源としての自己嫌悪
3 隠された死の崇拝
4 感情とは呼べない感情
5 適応、反抗そして暴力
6 内的な空虚の表現としての、権力者たちの権力政治
7 精神病質者とペール・ギュント
8 生き方としての狂気、抗議としての狂気
著者等紹介
グリューン,アルノ[Gruen,Arno]
1923年ベルリン生まれ。1936年アメリカに移住。テオドール・ライクのもとで精神分析家の資格を取得し、大学教育のかたわら、クリニックでの診療やプライベートな精神療法に従事。現在はスイスに在住。著書に『自己に対する裏切り』『偽りの神々』『共感性の喪失』などがある
馬場謙一[ババケンイチ]
精神科医。慶応義塾大学医学部大学院修了。現在、放送大学教授。著書に『精神科臨床と精神療法』(弘文堂)などがある
正路妙子[ショウジタエコ]
ドイツ文学者。東京大学大学院修了。現在、実践女子短期大学非常勤講師
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感想・レビュー
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テツ
23
大日本帝国しかりナチスしかり世界の歴史を振り返って見れば全ての邪悪はその時代時代の「正常な」大多数の人間により行われてきたことは明らかだ。正常であることに安心し群れの勢いに埋もれて個としての自覚も責任も放棄したまま暴走していく姿。なるほど。正常な立ち位置、思考を必要以上に求めそこにいることにしか価値を見出せないって異常なことなのかもしれないな。物の見方、世界の捉え方についてもう一度考え直すきっかけをくれる内容でした。若い子に読んで貰えると嬉しいな。2017/03/19
ミヒャエル・安吾
8
堕落論曰く、今こそ堕落するときぞ。結局みんな正常であらねばならないという強迫観念に取りつかれてるだけなのよね。2017/03/18
のんたんの
2
悩める10代の時に。親子関係が複雑だったので、これを参考にこんがらがった編み目を紐解いてゆきました。2010/03/02
つだしょ
1
社会的には「正常」な人間とみなされている人たちが、実は異常なのではないかという主張には、はっとさせられるものがあります。しかし、父親母親(特に母親)との幼少期の体験に原因があるとしたり、ナチスドイツのファシズムへの批判が根底にありすぎるような気がします。とはいえ、私の愛読書であり、ものの見方をガラリと変えさせられた数少ない本の一つです。
つだしょ
0
社会的には「正常」な人間とみなされている人たちが、実は異常なのではないかという主張には、はっとさせられるものがあります。しかし、父親母親(特に母親)との幼少期の体験に原因があるとしたり、ナチスドイツのファシズムへの批判が根底にありすぎるような気がします。とはいえ、私の愛読書であり、ものの見方をガラリと変えさせられた数少ない本の一つです。2011/01/29
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