内容説明
音楽は沈黙によって息づいている、音楽全体が…。それを越えると沈黙しかないあの極限へ向かっている。それこそ音楽のもっとも内密な本質が隠されている所だ。音楽は自ら生まれ出た沈黙へ、自らを否定するかにみえる沈黙へ向かう。本書は、伝記ではないし、もちろん無味乾燥な分析論でもない。単なる感想とも評論とも違う。細心の読譜にもとづきながら、しかも直観によって楽譜の背後に潜む作曲家の思想や深層心理にまで達する一つの想念がうちたてられている。
目次
1 衰退(屈地性;海の深さ、波と噴水、雨;グリザユと霧 ほか)
2 実在(光と高さ;空間と遠景;客観性 ほか)
3 出現(水に映る影;ほとんど無なるもの、風と雲;メリザンド、最後のピアニッシモ ほか)