内容説明
さまざまな民族の神話を背景に成立した西洋神話の重層的な構造をさぐり、集団としての人間の意識とそれが押し隠す無意識のうねりを、神話が形成される具体的な展開の内に跡づける、画期的な西洋神話の集大成。
目次
第1部 女神の時代(神話と祭式・東と西;蛇の花嫁;牡牛の伴侶)
第2部 英雄たちの時代(レバントの神々と英雄たち(前1500‐前500年)
ヨーロッパの神々と英雄たち(前1500‐前500年))
第3部 偉大なる古典の時代(ペルシャ期(前539‐前331年)
ヘレニズム(前331‐後324年))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
15
ユング主著「変容の象徴」を読み、神話に興味を覚え、本書を。米国の神話学者(著者)が、古代オリエント、レバント(ギリシャ、トルコ、シリア、キプロス、レバノン、イスラエル、エジプト)を含めた西洋の神話をBC1500年から順を追って、人類学と歴史の視点から広範に総ざらえした著作(上・下巻)。本書(上巻)は、主としてレバントの神々と英雄たち(BC1500年~)からヘレニズム(~AC324年)まで。あまりにも多岐に亘っていることから注意散漫になりつつも、旧約聖書(創世記、出エジプト記他)↓2013/10/23
roughfractus02
10
『千の顔をもつ英雄』で著者は東西の神話に共通する英雄の旅(出発-冒険-帰還)の構造を抽出したが、本書は、英雄神話の成立からシャーマニズムと融合して神の概念が一元化されて国家神話へ向かう系譜を辿る。本巻は、大地母神を崇めていた先史時代の動物との関係を表す神話が、神のような超越性を動物や森の妖精に見出していた無文字(壁画や陶器に記される)時代の多神教的神話が、文字を用いる戦士集団の活躍が主となる英雄神話にシフトし、ローマ帝国の出現に備えるヘレニズムまでを神話的な象徴の変容の過程として東西神話を縦横に渉猟する。2023/05/14
ラマンチャ
4
ギリシャ・ローマ・キリスト教という流れで把握しがちな西洋神話を、より大きな流れのなかで捉えなおした神話学の良書です。有史以前から紀元前2000年くらいまで(セム族やアーリア族といった戦士の集団が支配的になるまで)は、神話の主神や世界観は母神中心のものだった。母神(大地母神)は種(過去・死)を受け入れて植物(未来・生)をもたらす。植物栽培や月と月経の(天体と生命)の関連等から、母神神話は世界各地で普遍的な発達をしてきた。生死や善悪を分離せず、あるがままの世界を受け入れて祝福する、それが母神信仰の世界観です。2021/03/26
ひょ24
1
神話の予備知識があると, より読みやすいだろう。2018/07/11