内容説明
ヒトとはなにか。脳を解剖し自己を解放する。現代は脳の時代である。情報化社会とは社会が脳の機能に近づくことを意味している。現代人はいわば脳のなかに住んでいる。脳は檻なのか、それとも最後に残された自然なのか。
目次
唯脳論とはなにか
心身論と唯脳論
「もの」としての脳
計算機という脳の進化
位置を知る
脳は脳のことしか知らない
デカルト・意識・睡眠
意識の役割
言語の発生
言語の周辺
時間
運動と目的論
脳と身体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
チャーリブ
46
再読本。初版は1989年ですが、記録を見ると1996年に読んでいます。「脳ブーム」を作り出した一冊と言われていますが、「唯脳」という言葉が気になって読み直しました。最初に著者は脳と心の関係は構造と機能の関係に帰着すると言っていますが、正しいと思います。解剖学という彼の専門領域の話は興味深いですが、肝心の「機能」についてはある種の哲学談義のように感じました。脳の機能については最近の科学的知見をもとに考えるべきでしょうが、「脳と心」というタブーに挑戦した著作であったことは確か。2022/10/31
佐島楓
44
脳科学の授業の推薦書。古本で買ったけれど、文庫版を買い直した。それだけの価値がじゅうぶんある本です。2015/05/29
やす
8
視覚系と聴覚系は空間と時間をそれぞれ認識し、構造と機能に対応する。意識とは脳の機能である。脳が作り出したものであるから、人類の文化、科学は脳に規定されている。当然のことである。数学も物理学も進化論もそのとおり。現代は脳化した社会である。脳だけがあり身体性は排除されている。しかし脳も身体であり死が訪れる。といった内容。哲学を解剖すると脳の機能が現れたという趣旨。面白いが、デカルトで十分。2012/11/25
Mr_meganeboy
5
「現代とは、要するに脳の時代である。」という名惹句から始まる名著。我々が構造と機能をごっちゃにして考えすぎているという指摘と、構造はより無時間的な「視覚系」な見方であり、機能は時間的な「聴覚・運動系」な見方という考え方は目から鱗だった。さらに、その異質なものが脳の中ではじめて「連合」する時、人は「わかった」と叫ぶという論についてはもはや感動を覚えた。そして、終章で脳の身体性について述べ、身も蓋もないオチを突きつける。素晴らしい読書体験だった。ただ、知識不足ぎてイミフな箇所が多数あったので、いつか再読する。2014/06/22
kgbu
4
脳に関する21世紀の英語の文献を呻吟しつつ読む合間に本書をひろい読みっするのは楽しかった。解剖学者の前では脳も器官であり、消化や排泄と同様、意識も器官の都合であるはずだ、という論など、いくつも心に残った。また時間があったら再読したい。2014/06/17
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- 和書
- 本の雑誌 252号