出版社内容情報
インターネットによって世界中の知見へのアクセスが容易になり、また新型コロナウイルスの感染拡大以降、国境を超えることの条件も変わりつつある現在、留学という経験はどのように捉え直されるだろうか。分野も年代もさまざまな書き手たちが、海の向こうで触れた知や技、時代の空気を綴る「わたし」の留学記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
にたいも
10
作曲家の阿部海太郎さんの「小さな亡命」pp.117-122 1998年と2004-5年のフランス留学を描く。どのようにして阿部海太郎さんがあの「限りなくユニークで、かつ共感を得る開かれたもの」を作るアーティストになり得たのか、一端を垣間見ることができる。美しい文章。そして、まっすぐに見つめる目。/鵜飼哲「パリから〈南〉へ」pp.8-13 1980年代のパリ、そしてパレスチナ。2024/12/06
Atsumi_SAKURADA
3
長期留学は、いまここでの閉塞感の解決策には必ずしもならないものの、現状の問題の種類を変えてはくれるかもしれません。そうした年単位の留学を経て、各業界で活躍なさっている方々による寄稿集です。もちろん、生存者バイアスの集積ですが、それは先達の背中から自分の足元へと視線を辿らせた読者にとって、「道が拓くこともある」という希望の示唆でもあります。少なくとも「ここにいるしかない」という信念を解毒する読後の作用があるなら、即時的なご利益を説くビジネス書や自己啓発本よりは青年の目に触れるところにあるべき本なのでしょう。2024/11/29
Y.T.
3
研究者の留学エッセイをまとめた一冊。一番印象に残ったのは斎藤幸平のウィズリアン大学卒業式の写真(81)で、①丸坊主に角帽、②裸眼、③中途半端に曲がったピース、の三点セットで面白かった。それ以外には(1)中国でクィア・スタディーズを研究することの困難さに直面した福永玄弥、(2)イタリアでの8年間の留学生活を描いた桑木野幸司、(3)デンマーク留学によってキルケゴールの「臨床家」としての言葉の含意への理解が深まった鈴木祐丞、のエッセイが面白かった。2024/11/03
xivia | ゼビア
0
安定の玉石混合 わたしの研究に近い鵜飼先生と納富先生の文章がよかった。2025/03/04