出版社内容情報
「端切れ」を拾い、観察し、想像するというプロセスからpanpanyaのマンガは生成される。「寝入りばなにみる夢のよう」とも形容され、時に「ガロ系」をはじめとする日本のオルタナティヴ・コミックの水脈上に位置づけられるその仕事は、まるで終わらない自由研究のように拡大と深化を続けている。最新刊『商店街のあゆみ』の刊行に際し、拾い集められてきた「端切れ」たちを改めて見つめ直し、それらによって形成された架空の町の中でこれからも道に迷い続けるための地図を想像したい。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ホークス
33
2024年刊。不思議な漫画を描くpanpanya特集。『足摺り水族館』について、「水族館の感覚そのもの」を本という形状に封じ込めたかったと言う。腑に落ちたし、「封じ込める」が不穏で良い。いつもの主人公が正体不明なのは話の邪魔をしないための他、人物を深く描くのが苦手でもあるようだ。私の空気が苦手とちょっと通じる気もする。精神科医の春日氏は、作品が分別くさい俗世間から遠い事を「このろくでもない人生、厄介で辛い日々に対するシュールな慰め」と賞賛する。迷宮的で価値観を押し付けないこの世界を私も愛している。2024/01/09
二戸・カルピンチョ
15
ヤー、私もぱんぱんやと読むのに驚きました。これ買った本屋さんの店主さんもぱんぱにゃさんお好きなんですか?って言ってた気がする。それはさて置き、インタビューやら考察やらで、謎多きぱんぱんやさんを少しだけ知れて嬉しい。新美南吉好きなんだなぁ。素性がおおっぴらでなくても、作品は現実にあるしぱんぱんやさんは存在してる。それでもなお不思議に感じるなぁ。2024/08/10
阿部義彦
13
この特集で初めてpanpanyaと言う漫画家の存在を知り、中をチラ見したら、テキストとして、つげ義春さんのねじ式の一場面、漫画とその場面の直近の写真を比べる図式がありこれはテッテ的に読まねばなるまい、と思いユリイカと『枕魚』を買いました。それから他の2冊を読んだ上で、ユリイカに戻りました。本人のインタビューもあるが、注意深く男言葉も女言葉も排して、匿名性を保ってます。本人もつげさんからは、影響は受けてないと。成程それよりもSF研出身と聞いて腑に落ちた。そして謎解きと考現学との深い類似性も。もっと読みたい!2023/12/30
justdon'taskmewhatitwas
6
その才能に絆されたのなら、作品自体に熱狂していればいいものをつい批評本を手にしてしまう。よりcloseしたいというファン心理なのだが、その代償として不詳の作者の実年齢が判明し異界から現実に引き戻されるが如く興が冷めるはめになる。多くの作品に通底すると自分が感じる、道路端の溝に管からちょろちょろと流れ落ちる"生臭い水"のような心象に同調してくれる散文・論考は無かったけど、同人誌仲間や編集らが語る「商業デビュー」の経緯は、周りが放っておかず自ずと道が開くというまさに天才のそれでした。2024/01/06
Tom
3
去年panpanyaにハマって年末にこの特集号がでたので「これはキテるな」と思って購入。panpanya作品はよくサブカルっぽい店で見かける印象があるので、正直、読むまでは「サブカルくせーな」と思っていた。というか今も思っている。「コレを楽しめる俺って高い教養とセンスの持ち主だな」と思わせるような作風がサブカル臭さの所以ではないだろうか。←本書にこんな寄稿はない。漫画で選民意識を拗らせている俺が単にイタイ奴なだけなのかもしれない。そもそもpanpanya作品が本当にサブカル臭いのかどうかもわかんない。→2024/01/30