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戦後文学の終わり―ノーベル文学賞作家 大江健三郎の追悼特集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
読書家さん#lfJKjP
51
大江健三郎という人物や谷崎潤一郎はたまた柳田くにお、三島由紀夫『個人的に好き』や川端康成著者の作品にも触れた方々の評価等を事細かく書き出され大江氏の思想、万延元年のフットボールや個人的な体験様々な書評を兼ねて語られ凄く読み応えある一冊だと感じ生涯においての宝物の一作品となった事嬉しく思います。聖書哲学書広辞苑英和辞典等等いつでも手に取れる場所に置いておきたい作品となりました。割愛されず話が長くなりすいませんでした。2023/08/16
かふ
20
以前、ざっと読んだと思ったが記録漏れ。大江健三郎推奨委員会の三人娘、菊間晴子の評論(『犠牲の森で』の前宣伝だろうか?)と工藤庸子×尾崎真理子の対談が掲載されたのが読みどころか。こういう特集は全体的に大江健三郎の作品を読んでいることが前提となるが、芥川賞作家の市川沙央が大江健三郎からバトンを受け取ったもっとも若い世代になるのかと期待するような追悼文だったような。2025/03/18
タイコウチ
11
今年の前半は大江健三郎の未読だった晩年の「取り替え子」から始まる古義人シリーズと再読を含めて8冊ほど読んだが(途中で息切れ)、その伴走にこのユリイカの特集号も拾い読みを続けていた(こちらも完読できていない)。ノーベル賞受賞の頃から関心を失っていたことを少し反省。書き手は4分の1ほどが女性と思われ、時代の変化を感じる(「ハンチバック」の市川沙央さんの文章もある)。実はユリイカをきちんと読もうとしたのが久しぶりだったが、このフォント・サイズで論者たちの思索の詰まった論考を読み続けるのはけっこうきつい(泣)。2023/12/31
うし
4
二体の大江健三郎が背表紙と表表紙からこちらを見張っている。さらに一枚めくってもう一体。読者に対する圧力が尋常ではない。絓秀実が寄稿した『桃太郎の父-大江健三郎の「大逆」』について。『同時代ゲーム』に、中野重治を明らかに意識させる「原重治」なる登場人物がいる。「原重治」は「二重戸籍なる詭計で天皇制支配から村を守った」と絓は記すが、「原重治」はむしろ村の戸籍登録のカラクリを密告しようとした者ではなかっただろうか。ただし、この取り違えあるいは意図的な誤読こそが大江の読みにふさわしいような気もして、こまる。2025/03/17