内容説明
青年期に選び取った英文学への疑念を掘り下げつつ、「東洋」という居場所を見出す漱石。それは緊迫する二十世紀初頭の国際関係のなかで「日本」と「西洋」という「非我」をともども相対化する「われ」の在り処だった。―漱石の生涯と思想と文学をダイナミックに一体化させる。
目次
第1部 表現者への足取り(不在の“父”―自己形成の歩み;見出される「東洋」―ロンドンでの苦闘と『文学論ノート』;「猫」からの脱出―日露戦争と作家としての出発)
第2部 せめぎ合う「我」と「非我」(「非人情」という情念―初期作品における俗と脱俗;「われ」の揺らぎのなかで―東京朝日新聞社入社をめぐって;「非我」のなかの「真」―『三四郎』『それから』の「気分」と「空気」)
第3部 時代とアジアへの姿勢(露呈される「本性」―日韓関係の表象と大患の前後;「己れ」への欲望―『行人』『こゝろ』と時代の転換;「去私」による表象―『道草』『明暗』における境地)
著者等紹介
柴田勝二[シバタショウジ]
1956年兵庫県生まれ。大阪大学大学院(芸術学)博士後期課程単位取得退学。大阪大学博士(文学)。現在東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授(日本文学)。明治から現代に至る日本近代文学を幅広く論じている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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