内容説明
ホロコーストの嵐が吹き荒れるなか、ユダヤ人に逃走する理由がありすぎるほどあったとすれば、戦後、彼らはなぜ、もとの居住地に帰還して生活を再建せず、ヨーロッパを去ったのか。彼らは、どこに行きたかったのか。日本におけるユダヤ人DP(Displaced Persons)問題研究序説。
目次
第1部 ホロコースト後のユダヤ人(ユダヤ人DP問題の発生と展開;ユダヤ人DP問題の最終局面;ユダヤ人DPとアメリカ)
第2部 約束の土地は何処か(ブリハ―パレスティナへの脱出;ユダヤ人DPとイスラエル;「約束の土地」の現実)
著者等紹介
野村真理[ノムラマリ]
1953年生まれ。金沢大学経済学経営学系教授。一橋大学にて博士(社会学)取得。専攻は社会思想史、西洋史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サトシ@朝練ファイト
38
ホロコーストを生き残ったユダヤ人の戦後の行方そのものが研究対象とされることは少なく、1957年までドイツにユダヤ人DP(displaced persons)キャンプが存在していたことも、ほとんど知られていない。この本を読んで「シンドラーのリスト」のラストで収容所から解放されたユダヤ人達の回答が少しでも得られたかな。2017/01/28
1959のコールマン
34
☆5。ポーランドの反ユダヤ主義、1946年7月キェルツェのポグロム、戦前と変らぬユダヤ人拒絶反応、その他等々・・・絶句。言葉を失う。戦後においてもこれじゃ、ユダヤ人がヨーロッパ、特に東欧から脱出するのは無理ないだろう。もちろんシオニスト達の問題もきっちり書かれている。帯に書いてある「日本におけるユダヤ人DP(Displaced Persons)問題研究序説」に偽りなし。もちろん「序説」で、内容量としては小冊子レベルだが内容は濃い。「戦後」ユダヤ人達がたどった運命をこれだけ丹念にたどった著者には敬意を表す。2019/10/11
風に吹かれて
14
戦後、ドイツによるホロコーストを生き延びたユダヤ人のみならず、反ロシアのポーランドでは共産主義者=ユダヤ人であるとしてユダヤ人への暴力が絶えず、特に1946年7月4日に発生したキュルツェでのポグロムを契機として多くのユダヤ人がポーランドを脱出、また反ユダヤ政策を行うルーマニアでは職も住むところも奪われたユダヤ人が飢餓状態に陥りルーマニアを脱出するなど、ユダヤ人DP(Displaced Persons)問題が深刻だった。 →2024/04/30
Toska
13
大戦とその後の動乱により故郷を失ったユダヤ人、DPと呼ばれた人々の運命。ポーランドばかりでなく、ルーマニアも多くの故郷喪失者を出していたことは初めて知った。増大する一方のユダヤ人DPをめぐって、それぞれの思惑に基づき駆け引きを展開した米・英・シオニストの三者のうち、イスラエル建国のため「チャンス」を最大限に活かしたのがシオニストだった。だがその陰で、多くの人々の人生が文字通りに翻弄されたことも、本書は鋭く指摘している。2024/02/09
BLACK無糖好き
10
本書のキーワードはDP(Displaced Persons)、定義は戦争に起因する事情によって元の居住国を離れる事を余儀なくされ、他へ移住する為連合国の保護と援助を受ける資格のある者たち。戦後ユダヤ人の苦難の歴史の一端が垣間見られる。ポーランドでのユダヤ人虐殺の嵐、ルーマニアから脱出するユダヤ人飢餓難民、DPキャンプへの移動、約束の地パレスチナへの逃走とアメリカの難民法の制限、コンパクトな文量ながらユダヤ人DP問題とシオニストの関係の概略が記録されている。ユダヤ人に関する本は何冊も読む必要がありそうだ。 2016/08/25
-
- 電子書籍
- きまぐれキャット コンパスコミックス
-
- 電子書籍
- アタックNo.1 1 マーガレットコミ…