内容説明
ラディカル・フェミニズムの成果を享受する一方で、そのイデオロギーには違和感を覚える女性たち。フェミニズムはもはや存在意義を失ったのか?「政治的なもの」から「ポップなもの」へ、「社会的なもの」から「個人的なもの」へと重心を移しながら、多様な声を包みこむ第三波フェミニズムと、女性たちの文化実践を結ぶ、今日的フェミニスト・カルチュラル・スタディーズ。
目次
第1章 今日の女性たちとジェンダーをめぐる問題
第2章 メディア文化とジェンダーを研究するためのアプローチ
第3章 メディア表象とジェンダー構築のメカニズム
第4章 「主婦」向け情報番組が仕掛ける罠―沈黙は饒舌に包囲される
第5章 メディアスポーツとジェンダー―ジェンダー化される身体とミクロポリティカルなスポーツ空間
第6章 スポーツ観戦をめぐる性差のポリティクス―女性たちの文化実践とまなざし
第7章 オルタナティヴな空間を生みだすポピュラー文化―コスプレにおける文化消費と文化生産を例として
著者等紹介
田中東子[タナカトウコ]
1972年生まれ。博士(政治学)。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程満期退学。現在、十文字学園女子大学人間生活学部メディアコミュニケーション学科講師。専攻は、メディア文化論、カルチュラル・スタディーズ、ジェンダー・スタディーズ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kenitirokikuti
9
〈第ニ波フェミニズムの立場と第三波フェミニズムの立場では、「ポピュラー文化」に対する定義や関心の度合いが明らかに異なっていることである。たとえば、レベッカ・マンフォードは…次のようにまとめている。 第二波のフェミニストたちは、ポピュラー文化が均質的なジェンダー表象をまきちらしていくその方法を前面において批判してきた〉。 〈フェミニスト・カルチュラル・スタディーズの視点から、…女性イメージの意味解釈の複数性や、その転覆的な解釈行為などを重要な文化実践としてとらえる研究が行われつつある。〉2018/10/08
まあい
5
第三波フェミニズム(バトラー以降)の動向を概観できる。前半の理論編に加え、後半では女性サッカーファンやコスプレイヤーなどの研究もあり、面白い。「見る男/見られる女」という関係があまり固定的でなくなっていることや、サブカルチャーに少女の「抵抗」が現れていること、そしてそうした「抵抗」が市場経済へ回収されることなどが議論されている。第二波フェミニズムの整理がちょっと単純化しすぎな印象もぬぐえないが、「現在の」フェミニズムを理解するうえで良著だろう。たとえば守如子や東園子らの著作と併せて読むのもよいかもしれない2018/01/15
バーニング
1
4章以降の各論も面白かったが、本作の理論構築部分にあたる1~3章が白眉。いま、フェミニズムが蓄積したものが何を意味するかについて真摯に向き合っている姿勢に、強く感銘を受けた。2012/11/25