内容説明
虐待は…増加している?現代・都市の病理?心の問題?―児童虐待への常識的「まなざし」を問い直す。
目次
序章 「児童虐待」の発見(新しい社会問題;「児童虐待」へのまなざし)
第1章 「虐待」は都市で起こる―児童相談所における虐待相談対応件数の分析(虐待防止の力学に迫る;児童相談所における「虐待相談対応件数」の概要と見方 ほか)
第2章 「虐待」は増加する―攻撃・放置減少時代における増加説の台頭とその陥穽(「虐待の増加」への疑問;「虐待は増えている」 ほか)
第3章 誰が「虐待」を定義するのか―援助活動における「虐待」適用の回避戦略(理念上の定義と実践上の定義;「虐待」の定義をめぐる議論 ほか)
第4章 「虐待」の家族を生きる―まなざしが生み出す精神的傷害(苦悩への社会学的アプローチ;児童虐待とスティグマ ほか)
著者等紹介
内田良[ウチダリョウ]
1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程修了。博士(教育学)。現在、愛知教育大学教育学部講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
31
著者の博士論文がベースになっています。社会構築主義の立場からの論告だと思います。虐待を社会がどうとらえるのかは、今でも大きな課題だと思います。しつけと体罰、体罰と虐待という概念をどのように整理するかは実は難しい問題でもあります。しかし、それは主観的にとらえられるものではなく、客観性を持つものとして考えなければならないでしょう。そういう意味では本著がなぜ主観的に人びとは虐待をあってはならない行為として考えるのかの分析が必要だと思いました。2019/04/26
Olive
4
構築主義の立場から児童虐待を研究している。近年虐待は爆発的に増大している。統計上の件数では。 しかしそれは事実ではない。虐待という概念の拡大と社会的関心の増大が児童相談所の相談件数を増やしている。 社会的に許されることではないとする人々の観念がかえって社会問題を顕在化させる。これを安全と危険のパラドクスという。 社会学的にまなざす視点、人々が何を非難し、何を問題として意味づけているのか意味づけの目線が社会学には欠かせない視線だという。2021/05/26
山がち
1
興味深い指摘が多かった。児童虐待は「死亡数」は増えておらず、また虐待に対するまなざしは厳しくなっているのだから、暗数を含めた総数は実際は増えていないのではというのは説得力があったように思う。また、虐待を行う家族に対応する立場によって、虐待の捉え方が変わることは多く、特に母親を重視する立場にとっては虐待を簡単には認めないというのはまた重要なことかもしれない。実際に他の立場でも、母親に対しては簡単に虐待という言葉を使わないという配慮を行っており、この言葉が持つ意味が非常に大きなものであるというのが見えてくる。2013/10/25
さとちゃん
0
一週間かけてようやく読了。自分の統計学的力量のなさに泣かされる。“まなざし”に象徴される視点の有り様は、注意しないと怖いことになると再認識。タイトルに惹かれて手に取った本ですが、「学校リスク研究所」の内田良先生だったのね、と奥付を見て初めて気づいたorz2014/07/31
ちょこ
0
難しかった。。。2019/05/23