内容説明
廃棄物処分場などの、いわゆる「迷惑施設」の立地をめぐる合意形成の過程を、丹念な実態調査により描き出す。NIMBY(社会的な必要性はわかるが自分の裏庭には望まない)は地域や住民のエゴなのか。社会的承認の在り処に迫り、環境紛争の理解に新たな地平を開く。
目次
序章 廃棄物問題をどうとらえるか
第1章 環境紛争をめぐる合意形成にかかわる諸問題
第2章 公論形成の場における合理的手続き主義の可能性と限界
第3章 廃棄物処理をめぐる共同体の戦略
第4章 社会環境アセスメントをめぐる行政の調整戦略と住民の対応
第5章 環境保全条例をめぐる島嶼社会の戸惑いと生活世界の更新
結章 透明でつめたい合意形成から不透明であたたかい合意形成へ
著者等紹介
土屋雄一郎[ツチヤユウイチロウ]
1968年生まれ。関西学院大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。関西学院大学社会学研究科COE研究員を経て、京都教育大学教育学部教員。専攻は社会学、環境社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nさん
1
ニンビィ/NIMBYについての比較的新しい書籍。筆者は各地の事例を紹介する。最終処分場の適地選定合意の基準を決めることは、科学的・民主的に難しい。筆者はその解決の方向性が「不透明であたたかい合意」にあるという。だがこの言葉自体に具体性はない。ニンビィの難しさは米軍基地問題を考えれば誰にでも自明だ。社会学者がその自明で便利な概念を用いて、その難しさを憂うだけで、何の示唆が得られるのか?文章も不必要な修飾語が多く全くクリアでない。参照文献のツギハギばかり、自分の言葉で語っていない。ストレスの溜まる読書だった。2019/03/09
ハヤシコウダイ
0
自分の研究分野のため読了。NIMBY問題に向き合った事例を述べた本。事例が詳細に組まれていたが、何しろ、住民側に肩を入れすぎている。そのため、基本的に行政を悪いと書かれている。もう少し中立な文体が良かった。最終文のNIMBYとは作る側の「公共の正義」と受け入れる側の「迷惑」の状況を表象したものと表記。この一文がこの本のすべてだ。2024/07/17