内容説明
ナチスの強制収容所文献を素材に、強制収容所を「生きのびる」ことの意味を問う。ホロコースト・ブームの遙か以前、1974年に発表されながら、絶版によって永らく入手困難であった先駆的著作が、今ここに甦る。
目次
第1章 強制収容所を「生きのびる」ということ
第2章 「生」の諸条件
第3章 プロミネント―特権を与えられた囚人
第4章 適者生存―「壊れない」人びとの一類型
第5章 精神の死と肉体の「生」
結びにかえて―プロミネントと「回教徒」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Arte
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1974年に書かれた本の復刊で、まだホロコーストについて情報もあまりない頃に、著者が辿りついた強制収容所で生き残るために重要なこととは、「プロミネント」(特権囚)になることだという。各収容所での死亡率が時期別にまとめられており、ドイツが負けかけた頃に、撤退しながら大量に囚人を他の収容所に移送していった時期の死亡率がだだ上がりだった。2015/05/08
富士さん
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死を主題とせずにドイツの強制収容所の有様を語って見てみると、量的には大きく違っても、質的にはガス室があるだけの普通の社会だった、というお話です。外でものさばる奴がここでものさばるのです。本書の論旨とはちょっと違いますが、体の死に先んじて強いられる心の死に注目した慧眼は、強調してもし過ぎる事はないように思います。それは家庭で、教室で、職場で、すべての社会の中で、心を挽き潰されて“回教徒”になる事を強いられている人達に、共通の敵を示し、それと戦うためには何を守ればいいのかを教えてくれるからです。2015/01/30