内容説明
配る広告の「引札」、貼る広告の「絵ビラ」。当時の二つの主要媒体の情報性に着目。掲載した百三十枚を個々に考察し庶民生活の有様を描き出した異色の世相風俗史。
目次
前編 引札・絵ビラの歴史(広告の夜明け;引札・ビラの分布と作者たち;引札からみたあきない風景;「口上」広告史―おぼえがき;引札からみた銀座と浅草;引札周辺と世相風俗;引札・ビラの配布―「折込広告」前史)
後編 業種・業態別に見た引札(呉服・太物屋;小間物・化粧品屋;本屋と貸本屋;売薬と薬種屋;行商と振売り;食べもの屋・料理屋;旅と宿屋と土産品;博覧会から勧工場へ;遊郭・貸座敷)
著者等紹介
増田太次郎[マスダタジロウ]
明治38年、静岡県焼津市に生る。日本大学専門部社会科卒。同大学工学部調査課長・専門部講師(社会学)など。戦後は雑誌「宣伝」を主宰するとともに、宣伝広告のコンサルタント。昭和40年頃より広告史研究に志す。平成2年8月19日歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
11
青蛙房の新しい函なし選書。初版は明治生の著者による昭和56年。前半に江戸から明治にかけて出された引札(京阪ではチラシ)とビラの歴史を述べ、後半にこれらをよく利用した業態毎の特徴を披露する。前半では紙媒体による広告の発達した消費都市江戸と、街々での口上を用いた宣伝が中心となる大阪の差が目を引く。後半は業種として格が高かった呉服商の美麗な広告類、戯作者等を活用した小間物商引札の多様さから始まる。宣伝の効果が高い業種である出版業と薬種屋が屡々兼業し、戯作者本人が経営に関与して行う宣伝戦他、興味深い記述に溢れる。2025/06/10