内容説明
「ぬけられます」「ちかみち」で連想する大正期から昭和戦前まで栄えた私娼街・玉の井。その街の移り変わりを実在の娼婦たちをヒロインにした挿話で綴る“玉の井”語り。
目次
序曲
私娼街玉の井誕生
愛と憎しみと
元祖花電車
昭和病院日記
バラバラ事件始末
荷風残影
戦争と娼婦
まぼろしの心中
玉の井焼亡
終曲
著者等紹介
大林清[オオバヤシキヨシ]
1908年4月25日、東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科中退。1933年、同人雑誌「大衆文学」を創刊。1939年、長谷川伸主宰の新鷹会入門。村上元三、山岡荘八、吉川英治は同門。太平洋戦争中は報道班員としてシンガポールへ。第4代日本作家クラブ会長。日本文藝家協会理事長。紫綬褒章、勲四等旭日小綬章、勲三等瑞宝章受章。「ひつきはあかしといへど」芸術祭最優秀賞受賞。『庄内士族』(輝文堂)第3回野間文芸奨励賞受賞。1999年10月27日歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
58
玉の井と言えば滝田ゆうさんの作品を思い出します。沿線に住んでいながら、最近までこの駅で降りたことはありませんでした。今は玉の井ではなく東向島となってしまい風情もありません。著書は、玉の井が避けていた時代の話。荷風も登場し、この地で起きたバラバラ殺人事件も登場します。なんでしょう、とってもいいんです。景色や空気、そこにいる人たちの情。これが街なんだと実感します。初版は昭和58年、まだそんな昔でありません。2021/07/18
mim42
4
玉ノ井好きの人にはたまらない資料。取材と史実に基づく創作、といったところだろうか。私が産まれるとうの昔に消え失せた場所だが、目を閉じれば不思議と浮かぶラビリンス。こんな場所が…日本に…あったなんて…あ、まだあるのか。某新地、もうこの目で確認するしかないな、あくまでも研究目的で。仕方なく。見るだけ。「見るだけでも見てってお兄さん」コロナ後に。2021/07/07