感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumicomachi
3
故郷金沢への想い、はるかなときやものへの憧れ、身の巡りのあれこれ、篤志面接委員として担当する刑務所の短歌クラブでの経験……。題材はさまざまだが、たしかな写実の技術と自在な想像力で詠まれる短歌はどれも魅力的だ。歌論・エッセイも作者の短歌に対する真摯で熱い思いと厳しいまでに研ぎ澄まされた美学を伝えて読み応えがある。〈六歳と毛糸のあやとりする日暮はやも百年過ぎたるやうな〉〈エルガーのチェロコンチェルトが鳴つてゐる父母なき後のわたしの時間〉〈確執のありたる人の栄達をききて月明の街を帰り来〉等。2021年10月刊。2022/01/02