感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だいだい(橙)
16
ゆったりとした時の流れと穏やかな心、生き物や植物、暮らしの隅々へ向けられる暖かい視線を感じる素敵な歌集でした。横山さんの歌には蝉や蟻、水鳥や梟、そして飼い猫など、多くの動物が出てくるのもいいです。心が疲れた時に詠むと、静かな気持ちに戻れる気がします。日本語の美しさを極限まで追求したような上品な文語の使い手でありながら、好きなミュージシャンは久保田利伸というギャップもいいですね。コンサートの連作も2回出てきます。「とく来たりませ」というタイトルもこの世界観に合っていると思いました。2023/11/03
双海(ふたみ)
9
歌誌「心の花」選者。『とく来りませ』は、讃美歌94番の歌詞〈久しく待ちにし主よとく来りて〉が元になっています。イエス・キリストを待ち望む、素朴でひたすらな信仰があらわれたこの言葉に心惹かれます。(本書「あとがき」より)「水に触るるごとくかをりにふれて見る薄日のなかの梔子の白」「ひとのをらぬ部屋に入りて水仙のかをりのなせる嵩をくづしぬ」「室内にちひさき光とどきゐていづくにか冬の水の揺れをり」「いくつかの冬を眺めてしづかなるこころ持ち来つこの木の椅子に」「点描の朝焼けの海追憶はひかりのなかへ散りゆくものか」2023/06/24
yumicomachi
3
聴覚に訴えかける歌や、子どもの歌に惹かれるものが多い。〈老い人がをさなきものに教へゐる草の名きこゆ塀をへだてて〉〈時の間のまぼろしのごとをさなごの性をわかたぬこゑひびくなり〉〈肩で傘をささへてあゆむをさな子の後ろをゆけば傘の柄見ゆ〉〈忘れられむひと時としてしめりゐる小さなる手と握手をしたり〉〈あけゐたる窓ゆ夕蟬のこゑは入り子供にあらぬわれに夏来ぬ〉〈角砂糖のちひさき包み展きゐつこゑがことばをなすまでの間を〉など461首。タイトルは讃美歌94番の歌詞が元になっているという。2021年4月刊行の著者第六歌集。2021/04/26
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