内容説明
春は大瑠璃や黒つぐみの姿を追って山を歩き、秋には飛来する白鳥を迎える。三流のバードウォッチャーを自認する著者は、三十年前に東京を脱出し、飯豊山を望む町に住み着いた。悪戦苦闘の末に、和解した土地の精霊の声に耳を澄ます。目指すのは不壊の歌!待望の第三歌集。
目次
雁かへるそら(歩哨と廃兵;耳鳴り狂詩曲;転送 ほか)
アーモンド花咲く村(絶対にひとりの歌;毒;人類 ほか)
永遠の夏(フォレをおもふ;葡萄峠;乳房雲 ほか)
著者等紹介
山田富士郎[ヤマダフジロウ]
『アビー・ロードを夢みて』1990年(雁書館)第35回現代歌人協会賞。『羚羊譚』2000年(雁書館)第6回寺山修司短歌賞、第1回短歌四季大賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kaoru
5
山田富士郎の第3歌集。新潟の自然の美しさ、疲弊していく地方へのまなざしが厳しくも優しい。進みすぎた資本主義のもとで「短歌もビジネスチャンス」にされていることへの鋭い批判。彼が批判している対象は明らかだが、今の社会でどちらが多数派かと聞かれれば……『商品とゆめ』という題が切ない。「電脳を憎むにあらずこれの世の匂ひとひかりいつくしむのみ」「近時短歌の玩弄さるるはSLの愛玩さるるに似て及ばざり」「夜空よりひかりを抽出するごとし苦悩より汲む快癒のちから」「蝉をとらへ仔にあたへたる母猫の眼の金色の永遠の夏」2018/07/01