感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はち
3
河野裕子さんの死、子供達の成長、ふるさと宮崎を襲う新燃岳の噴火と口蹄疫。そして震災。原発事故。変わりゆく時代の中で歌われる歌の数々。特に第三部の原発後の福島を描いた歌は強烈である。172ページの3首は言葉にならない思いを抱いた。また震災以前の連作だが、「トロイア」と言う連作はトロイ戦争と現代の政治をリンクさせているところが面白い。個人的に好きなのは81ページのU2ネタ。あの曲を、名の無き路と訳したのはさすが。2015/01/30
なま
1
個人的に「汚れたる 上履き持ちて昼過ぎに帰り来たりぬ 卒業の子は」に共感。2008~2012までに作った歌482首の歌集ですが、著者故郷宮崎での口蹄病、新燃岳の噴火に加え、福島第一原発事故に関わる歌も納められている。2016/12/17
toron*
0
日蝕の終わりし空はおおいなるがらんどうなる風ふきわたる いやだなあ雨の時代に遇うなんて ゆっくり溶けてゆく紙袋 磨り減りし活字の残るマルクスの文庫のなかにさやぐ燕麦 トランプの切らるる迅さ鉄橋のすきますきまに冬の海輝る 一日のなかにも秋があるという 鏡の底の深くなるころ 河野裕子さんが亡くなった時期、東日本大震災の後に福島を訪れた時期で、そのため政治的色合いや破調の歌が、これまでの歌集よりも多い気がする。自分はほとんど河野さんの歌に接してなかったが、触れていたら感情移入してもっと読めていたかもしれない。2021/01/12