感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かみしの
8
角川短歌賞を受賞した「黙秘の庭」は、つい最近まで大学生だった僕にはわかるわかる、とうなづいてしまう歌が多かった。〈キーボード打つのみの仕事に前任の打ち癖はあり コンマが半角〉〈昼過ぎて木陰の椅子は泣くためにある きみは研究をつづけよ〉など。〈逆光の鴉のからだがくつきりと見えた日、君を夏空と呼ぶ〉〈消えさうな人だから呼びたくなりぬ冷えた受話器に声を集めて〉〈なんでもない朝の空にさしだして季節のごとくひらく青傘〉前二首は口語的感性と、歴史的仮名遣いのマッチングが、一首は66577のリズムが面白い。破調が多い。2014/07/28
はち
5
やっと読めた。タイトルにあるように、やたら鴉の出てくる歌集。第一歌集にしては珍しく編年体で編まれているが、作品のクオリティは最初から高いので違和感なく読める。初期の弟が第2部以降出てこなくなるのも面白い。研究生活から大学を辞めて、就活をするまでの一人の姿が鮮やかに浮かんでくる。「黙秘の庭」だけだとこの作者の全貌は、やはり見えないだろうな。派手さは決してないけれど、歌を読む喜びを感じられる歌集。2016/01/20
すずき
2
第二歌集を読んでからの第一歌集。正直角川短歌賞受賞の「黙秘の庭」には生活詠のあまりの多さとその生活感の濃さから疑問符がついた。が、第二歌集では、こうした生活詠とそれ以外が見事に統合されていて、その過程を読んだようだった。2016/11/06
山田風子
1
女性の歌集でこうも性を感じさせない、評で触れられているように全体としてユニセックスな点が印象に残った。関心の軸に時があり、それが歌集の透明度を高めているような気がする。それでいながらそのときそのときの歌い手の立ち位置も伝わる。言葉もうつくしい。この方の歌集をもっと読みたいと思う。2014/07/23