内容説明
東京の空襲の夜、爛漫と花咲いたまま火中にほろびてゆく日本の桜、戦火に荒廃するアラビアンナイトの国、意識を失った病床で空襲の恐怖をいう妻、今も身に迫る思いの中から生まれた。著者最新歌集。
目次
忘じ難し、少年の春
廃仏棄釈の跡
髯白む夜々
髭・鬚・髯
炎の桜
桜児のうた
異境、なほわれを誘ふ
歌こそは慨みの声
バグダッド燃ゆ
ことだま
戦火ふたたび
万羽の北帰行
見ずかなりなむ
病む妻と桜
桜と翡翠
涙眼
黄金の糸
遠長浜
たましひの鳥
謀反人なき世
サッカーの歌
日本列島、鎮まりがたし
家郷茫々たり
闇の桜・光のさくら
わが原初のうた
怒りの墓
歯抜け地蔵
内は洞ほら・外は統ぷすぷ
インドの河
ローテンブルクの朝
山河鳥獣、われと共に滅びむ
都鄙恋々
坂のある街
悲しき軍歌
わが身体髪膚
愛憐 忘じがたし
紀宮様を寿ぐ歌
ゆき・ゆき・ゆき
黄金の街
惚け忍法帖
怨愛 尽くる時なし
旋頭歌 若葉の霊
長歌 三矢重松博士八十年祭 折口信夫博士五十年祭 祭詞
長歌 折口信夫之命五十二年祭前夜祭 祭詞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kota
13
戦争体験者である歌人のイラク戦争時の歌集。「砂あらし 地を削りてすさぶ野に 爆死せし子を抱きて立つ母」戦争への怒りは戦争指導者から神にすら及ぶ。「信篤き大統領は 異教徒を 屠りつくして こと足るとせむ」「かくむごき戦を許し しらじらと 天にまします 神は何者」バグダッドの惨状はかつての東京に、自爆者は亡くなった戦友に重なる。「東京を焼きほろぼしし戦火いま イスラムの民にふたたび迫る」「わが友の面わ つぶさに浮かびくる。爆薬を抱く 少年の顔」「いつの世も 若きいのちは あざむかれ死す」生の重みに充ちた歌集。2019/08/31
のり
8
第二次大戦の戦後派としてイラク戦争という同時代状況に痛烈に警鐘を鳴らす。うたのなまなましさと迫力が伝わる一方で、母のようなやさしさと戦争に散った同時代人へのただならぬ想いが漂いこめる一冊。2019/08/21
awakening
0
国敗れて 身をゆだねるアメリカに、、、 、、、、、、、 正直、少し驚きをもって読んだ。８０歳を超えられた岡野弘彦さんの心の叫びの静かさの中に非常な熱さを感じることができた。2015/06/02
