内容説明
はてしない灼熱のサハラ砂漠を、おさないむすこイサをつれて、若い夫婦がひたすら北を目ざして歩きつづけている。きょうで五日目。ひどい干ばつに見舞われて、それまでくらしてきた村を離れ、夫オコボエの故郷、トゥアレグ族の大地を目ざす旅。飢えとかわきに苦しみ、もはや泣き声すらあげられないイサにとって、それは危険な賭けだった。いっぽう、フランスから人道援助にきていた医師マリーは、オコボエたちのことを知り、かけつける。イサを病院まで運ぶ手はずをととのえて、ヘリコプターを待っていたが…。イサに死のかげがしのびよる。きびしい大自然、ひたむきに生きる人びとの姿を美しくうたいあげた、いのちのつながりの物語。
著者等紹介
ボード,ピエール=マリー[ボード,ピエールマリー][Beaude,Pierre‐Marie]
フランスに生まれる。メス大学人文学部で教鞭をとる
井村順一[イムラジュンイチ]
東京都に生まれる。東京都在住。東京大学・独協大学名誉教授。専攻は、17・18世紀フランス語・フランス文学。児童文学にも深い関心を持つ
藤本泉[フジモトイズミ]
秋田県に生まれる。東京都在住。独協大学大学院フランス語学専攻修士課程修了。絵本の編集にたずさわる
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感想・レビュー
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ジュースの素
12
児童書ではあるが、年齢に関係ない内容だ。サハラ砂漠に住む民族の強さと暮らしの厳しさをしみじみ感じる。人の努力だけでは賄いきれない干ばつや砂嵐によって小さなオアシスの村は簡単に破綻する。人々は別のオアシスを探して果ての無い砂漠の旅を余儀なくされるが 簡単に見つかる筈もないし、別の部族との衝突もある。児童書として小学生の頃に世界の現状を知るのには恰好な本かと言える。2018/01/11
tellme0112
9
これが児童文学か…。児童文学だけど、主人公らは大人です。そして解説にあるように会話に寄らないコミュニケーション。あたたかな親族との思い出と、絶望したくなるのをなんとか踏みとどまる現在と、かすかな未来への希望をにじませて。難しいだろー。こんな本、初めてだ。そしてすごい存在感。2017/09/17
航輝
3
図書館本 サハラ砂漠を旅する一家の物語 病気の子供を連れた旅 干ばつや飢きんによって村を失ったオコボエ 命の大切さを考えさせられる こどものイサの死は誰に対しても辛いものだった 2023/05/21
ぽけっとももんが
3
マリー側と、オコボエ側の視点から語られる。どちらかに絞ったほうがよかったんじゃないかな。 とはいえ、旱魃の砂漠の息苦しいほどの暑さ、水分と共に奪われていく命にたいするやるせなさが伝わってくる。 それにしてもこのシーズは良作揃いだと思う。2012/06/14