出版社内容情報
マイクロコントローラ技術は,携帯電話のような他の技術分野ほど急速に進化していないように見えます.しかし,実際は急速に進歩しています.例えば,Armv8-Mのような高度なアーキテクチャの採用は,すでに2018年くらいから始まっています.現在では,Arm Cortex-M33/M23プロセッサをベースにした新しいマイクロコントローラが半導体ベンダから数多く発売され,これらのマイコンにはArm TrustZoneなどの新技術が採用されています.
IoTアプリケーションで主に使用されるセキュリティ機能であるTrustZoneテクノロジは,Armv8-Mの新しい主要な機能です.他にも組み込みシステムの堅牢性を高めるための新機能もいくつかあります.例えば,スタック限界チェックや改善されたメモリ保護ユニット(MPU)などです.また,Cortex-M23とCortex-M33プロセッサは,同じクロック周波数のCortex-M0+やCortex-M3/M4と比較して性能が向上していますので,多くのアプリケーションでArmv8-Mプロセッサを利用するメリットがあります.
しかし,小ささが特徴のマイコンですから,これらの機能や仕様は慎重に検討して厳選した末に追加されたものばかりです.なので,それらは理由があって追加されています.しかし,マニュアルでは辞書的に説明されていますが,その理由や,どう使いこなせばいいかまでは記述しきれません.
そこで本書は,基本的な命令の動作から解説し,実際にどう使いこなせば良いかまでを記述しているので,基本知識を前提としたノウハウ集ではなく,これから初めてCortex-M33/M23ベースでマイクロコントローラのソフトウェアを開発するプログラマにも役立つと思います.この本は,Armv8-Mベースのプロジェクトを始めようとしている多くの開発者の役に立つことを願っています.
筆者は,Cortex-Mシリーズが開発される前からArmで活躍し,2024現在でも,Arm IoT/組み込みプロセッサ・チームの優秀なエンジニアです.Cortex-M0/M0+やCortex-M3/M4のガイドブックも執筆していて,Cortex-M33/23について解説するには最高の執筆者です.
内容説明
本書は、Arm Cortex‐M23/M33プロセッサに関心のあるハードウェア・エンジニアとソフトウェア・エンジニアの方を対象にしています。組み込み機器開発者や組み込みソフトウェア技術者、大学の研究者、さらにマイコンの知識のある方が、Cortex‐M23/M33プロセッサの概要を調べるための内容となっています。Armv8‐Mアーキテクチャの入門、命令セットの概要、命令セットの使用例、ハードウェアの特徴、TrustZoneテクノロジとセキュアなソフトウェア開発および、このプロセッサのデバッグ・システムについて解説しています。
目次
序章
Cortex‐Mプログラミングを始める
Cortex‐M23とCortex‐M33プロセッサの技術概要
アーキテクチャ
命令セット
メモリ・システム
メモリ・システムのTrustZoneサポート
例外と割り込み・アーキテクチャの概要
例外と割り込みの管理
低消費電力とシステム制御機能
OSサポート機能
メモリ保護ユニット(MPU)
フォールト例外とフォールト処理
Cortex‐M33プロセッサの浮動小数点ユニット(FPU)
コプロセッサ・インターフェースとArmカスタム命令
デバッグとトレース機能の紹介
ソフトウェア開発
セキュアなソフトウェア開発
Cortex‐M33プロセッサでのディジタル信号処理
Arm CMSIS‐DSPライブラリの使用
高度なトピック
IoTセキュリティとPSA Certifiedフレームワークの紹介
著者等紹介
ユー,ジョセフ[ユー,ジョセフ] [Yiu,Joseph]
Arm IoT/組み込みプロセッサ・チームの優秀なエンジニアです。2000年にSoCの設計を開始し、組み込み分野のリーダとして20年以上活躍しています。担当は、組み込みアプリケーション向けの技術開発と製品に重点を置いています
五月女哲夫[サオトメテツオ]
大学卒業後、計測器メーカのR&Dで製品開発を担当。その後アーム株式会社において技術サポートや営業を担当し、現在はIP製品の営業活動を支援中です(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。