内容説明
16歳になった少年アーサーは従者として地中海の都ヴェネツィアにたどりついた。壮麗なガレー船、あつまった騎士たち、剣や弓や大砲、東方の商人やオリエントの香り。世界のすべてがそこにあった。ついに念願の騎士に任じられたアーサーは、戦のむなしさに直面する…。いっぽう、マーリンがくれた“予言の石”の世界でも円卓の騎士たちが挫折と分裂にひんし、アーサー王は王妃の裏切りに苦しんでいた。ふたりのアーサーは王になれるのだろうか。少年騎士の物語と“アーサー王伝説”が美しくからみあう傑作ファンタジー。堂々の完結編。
著者等紹介
クロスリー=ホランド,ケビン[クロスリーホランド,ケビン][Crossley‐Holland,Kevin]
イギリス生まれ。オックスフォード大学で歴史と文学をまなび、中世の詩の世界に恋をした。そのあと子どもの本の編集者をしながら作家になる。85年には『あらし』でカーネギー賞、2001年には「ふたりのアーサー」の第一巻で、ガーディアン賞を受賞した。イングランドの東部、海をのぞむノーフォークに暮らす
亀井よし子[カメイヨシコ]
翻訳家
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
25
いよいよ十字軍に向かったアーサーだが、今回の十字軍はインノケンティウス3世によって呼びかけられ、フランスの諸侯とヴェネツィアを中心として行われた十字軍。当初の目的であった聖地には向かわず、キリスト教国の東ローマ帝国を攻略し、コンスタンティノポリス(コンスタンティノープル・現イスタンブール)を陥落させ、略奪・殺戮の限りを尽くしたため、最も悪名の高い十字軍として知られる。キリスト教精神を広めるどころか、逆効果しか生み出していない最悪の十字軍だったわけだ。 2021/12/18
呉藍
6
少年が大人に変わるとき、世界の真実は美しいけれど同時に残酷さも孕んでいる。16歳になったアーサーにとって眩しくも重い現実の嵐。戦が過酷になるにつれ石の中の物語も荒れていくシンクロ度合い。どうなるんだろう、どうなっちゃうんだろうと始終どきどき。そして王の誕生――ここにたどり着くのか、と私も長い旅をしたような気分。小学生で挫折しておいて正解、これは今だからこそ楽しめるファンタジーでした。2010/09/28
ヴェルナーの日記
5
本シリーズの最終巻。黒曜石の中のアーサーは伝説どおりに、ランスロットとグウィネビア妃の密通に、モルドレットの裏切りによって円卓の騎士が解体されてしまう。しかし、現実のアーサーはエルサレム奪回のためにヴェネチアまでやってくるのだが、様々な国の思惑や陰謀が渦巻いていた。アーサーが参加した聖戦は、第2次十字軍であり、これは紆余曲折の中で、最終的に失敗に終わってしまう。物語はアーサーの出生の秘密をめぐり、唐突のなかで終わりを迎えてしまう。2014/10/31
たかし
2
第四回十字軍に参加したアーサーだったが、十字軍は迷走して結局ろくに戦地に行かぬまま帰ってきてしまった…。そして、アーサー王との関係だけど、特に何もない…。こんなんだったら、アーサーに十字軍に参戦させる必要はあったのか、アーサー王との関連性を示す必要はあったのかという感じで終わってしまった。一巻が一番面白かったな。2017/01/24
がる
2
クリスチャンとして色々考えさせられる内容でした。手元に置いておきたい本です。2009/10/14