内容説明
おなかをすかせてこごえているトナカイのこに、ダーチャはなにもしてあげられなくてほんとうにかなしかったのです…。でも、せかいじゅうのこどもたちがダーチャのいのりにきがついてくれました。
著者等紹介
木崎さと子[キザキサトコ]
1939年、旧満州新京市(現・長春市)生まれ。6歳で引き揚げ後、少女時代を北陸で過ごす。二十代から三十代をフランスで暮らし、帰国後、イエスのまなざしの中に現代の日本に生きる意味を見つつ、表現したいと願って、執筆活動に入る。『裸足』で文学界新人賞、『青桐』で芥川賞、『沈める寺』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞
黒井健[クロイケン]
1947年、新潟生まれ。新潟大学教育学部卒業後、出版社に入社。絵本編集の仕事を経て、フリーとなり、1983年、雑誌「詩とメルヘン」に掲載した一連の作品で、第9回サンリオ美術賞を受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
82
聖パウロ女子修道会によって出版された絵本の中から選んだ2冊目です。ダーチャとは、ロシアやウクライナなどの言葉で、郊外に位置する庭付きの小さな家や別荘、菜園を意味します。誰も居なくなった冬の日、トナカイの子が助けを求める声を聞きますが、建物なので動くことができません。なにもしてあげられなくて、トナカイの子の悲しみ、寂しさ、孤独を、じっと見つめて祈るしかありません。その祈りがクリスマスの夜に奇跡を起こします。苦しんでいるたくさんの子供たちにもトナカイの子と同じようにクリスマスの喜びがありますように....2024/12/05
ぶんこ
40
ダーチャとは夏の間だけ使われる家。雪の積もる寒い日、足に怪我をした子どものトナカイが親を探していますが力尽きてうずくまってしまいました。ダーチャは助けたいのですが、家なので動くことも話すこともできません。神様に「この子をよろしく」と祈ります。クリスマスの夜、サンタさんと現れたあの子どものトナカイ。ダーチャの屋根に大きな袋を届けます。中には食べ物と薬、包帯が入っていました。お腹をすかしたり怪我をしたみんな、待っててね。作者後書きに「もう一人の私に目を向けて、サンタクロースのお手伝いをする日がクリスマス」と。2024/12/29
サク
30
貧困、戦争、病気等、情報ばかりが伝わる。いじめを考える絵本『おおきなあな』が浮かぶ。ダーチャの存在は、情報を見ている私達を指しているのだと伝わった。動くのか動かないのか、見る側の悩む心の『あな』が見える。祈りはマスコミを通して私達の目と心に情報として飛び込んでくる。その祈りに対して具体的にどう取り組むかは私達の心の問題。サンタクロースはもう一人の私達を示し行動すると決意した姿を表現している。その姿に苦しむ人々は心をうたれ賛同し共に付いていく。一人の祈りがやがて行動となり世界中に広がる事を期待したい。2015/04/26
ヒラP@ehon.gohon
18
夏の間しか使われない家から見たお話です。 動くことのできない家のダーチャの前で、足を怪我したトナカイの子が動くこともできず、静かに死んでいきます。 ダーチャはただ祈るばかりです。 なんとかなしいお話でしょう。 そしてなんと崇高なお話でしょう。 トナカイの子は、サンタクロースによって天に召されます。 死んでいく子どもたちに無力な大人たち、とても意味深い絵本でした。2019/12/01
はなちゃん
5
黒井さんの絵と相まってとても美しい絵本でした。読みながら泣いてしまいそうで、読み聞かせは無理だわ^^;2013/11/28