内容説明
落ちぶれた伯爵が、自分のところから逃げ出して嫡男を出産したばかりの若い妻と、その養い親をローマで惨殺した。奇跡的に息をたもった妻の言葉から、伯爵と手下4人は逮捕され、裁判にかけられた。その裁判記録が『指輪と本』の素材となった『古い黄表紙の本』で、書名の「本」を指す。では「指輪」は何を指すのか?「時は春、日は朝、朝は7時…」で知られる詩人ブラウニングが、芥川の「薮の中」に影響を与えた手法で17世紀イタリアの殺人事件を扱う。全12巻の超大作を、一般読者をも念頭におき、素っ頓狂な弁護士とハチャメチャ検事の語りも含めて解読する。
目次
第1巻 「指輪と本」―叙事詩とブラウニング
第2巻 「半ローマ」―もう一つの人間悲劇
第3巻 「残りの半ローマ」―話者の実像
第4巻 「第三の男」―野心家の本音と本性
第5巻 「伯爵グイード・フランチェスキーニ」―延命のレトリック
第6巻 「ジュゼッペ・カポンサッキ」―人間的なヒーローの造形
第7巻 「ポンピリア」―永遠への飛翔
第8巻 「アルカンジェリ」―息子と食物とラテン語と
第9巻 「ボッティーニ」―「ぼろ雑巾言語」の究極のサンプル
第10巻 「教皇」―勇気ある老いの肖像
第11巻 「グイード」―責任転嫁の醜相
第12巻 「本と指輪」―言葉の虚しさと人間の真実
著者等紹介
黒羽茂子[クロバネシゲコ]
大阪市出身。1956年大阪大学文学部英文学科卒業。1956‐64年大阪市立高等学校教諭。1978年熊本大学大学院(英文学専攻)修士課程修了。1985年オックスフォード大学大学院夏期コース修了。1988‐1997年九州女学院短期大学勤務。1998‐2002年九州ルーテル学院大学勤務、教授にて退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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