内容説明
広島と長崎に落とされた原爆が、米ニューメキシコ州ロスアラモスの砂漠の秘密軍事基地で開発・製造されたことはあまり知られていない。ここでは6,000人もの科学者や軍人、労働者とその家族が働き、生活していたのだ。…妻は夫の仕事について全く知らされず、悩み苦しむ。その不安と焦燥、笑いと涙の日々を、両親にあてた手紙を基に再現した回想録。戦後広島を訪れて執筆を決意した経緯も綴る。皮肉とユーモアを交えながら、隔離生活の実像を伝える。
目次
1 原爆慰霊碑と砂漠の台地
2 シャングリラ
3 丘の上の友人たち
4 このあたりのこと
5 妊娠して思うこと
6 クライマックス
7 ついに平和が!
8 収穫の時
9 新たに知ったこと
10 私たちのこと
11 丘を去るまで
12 ヒロシマ―1979年
エピローグ―1983年4月のロスアラモス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
37
『新古事記』(村田喜代子)で紹介された本書は、原爆開発科学者の妻の手記である。主に1944年10月から46年9月まで暮らしたニューメキシコ州ロスアラモスのメサ台地での日々が綴られる。極秘のマンハッタン計画だから閉鎖的で夫の研究内容も知らされず、外部(親兄弟、友人たちなど)との連絡もままならない生活が詳しい。また原爆投下後のメサ台地の人々の反応やオッペンハイマーたち科学者の言動もうかがい知ることができる。なんぼ不便で理不尽なメサ台地の暮らしであろうと、ヒロシマやナガサキの被爆者の悲痛な日々と比べてしまった。2024/07/20
KEI
12
柳田邦男氏の本の中に紹介されていた図書館本。物理科学者を夫に持つ若い妻が赴任地・ロスアラモスで暮らした2年間と、その34年後に広島を訪れた事から始まる手記。何処へ住むのか、夫は何をするのかすら分からず、半ば強制収容所の様な世間と隔絶されたcommunityの中で感じた不安や生活の不自由さ、原爆投下されて以降、感じ続けていた思いが痛々しい。元には戻す事が出来ない時代と変わった今、自分の平和な暮らしを享受しているだけで良いのか?30代の主婦の共訳。序文は柳田邦男氏。多くの方に読んで頂きたい本。2016/03/19
後ろのお兄さん
3
物理学者を夫に持つ妻がある日突然、夫がマンハッタン計画の中枢に行くことになって、ロスアラモスに移り住む。人工的なこの街でどんな生活が待っていたのか。 当たり前だけど、同時代の日本よりずっとずっと豊かな生活で、当時の彼我の差を思い知らされる。 トリニティ実験が成功し、広島に原爆が落ち、長崎にも落ち、自分たちが関わってきたことの罪深さに悩む。何をどう考えたものか。2024/03/11
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