出版社内容情報
戦後、親睦互助を目的として戦友会を結成した旧陸軍のエリートたちは、戦争を指揮したことに自責の念を抱いていた。その彼らがなぜ「歴史修正主義」に接近し、政治団体として会を先鋭化させていったのか。陸軍将校たちの戦後史と戦争観の変容に迫る。
*これまでの軍隊経験者の戦後史研究はおもに、末端の兵士や下士官(準エリート)を扱ってきた。本書は、旧陸軍の上級者であった者たちに焦点を絞り、彼らの戦後史と戦争認識を明らかにしている。
*戦友会を対象とした従来の研究群においても、戦友会の非政治性や、戦後世代へ会を継承することの困難さが指摘されてきた。一九九〇年代に会の政治化を遂げ、元自衛隊幹部へ門戸を開いた本書の事例は、戦友会研究の蓄積にも一石を投じるものである。
内容説明
戦争体験者の「証言」と「記録」は、いかなる文脈から生み出されるのか。旧陸軍のエリートとして戦争の中枢にあった陸軍将校たち。彼らは戦後、政治活動からは距離を取り、親睦互助を目的とした偕行社を設立した。戦争を指導する立場にあった自身の責任とも向き合い、痛烈な自己批判も行っていた。しかし、ある時期を境に、彼らは「歴史修正主義」に接近し、会も政治団体としての性格を強めていく。その背景には何があったのか。陸軍将校たちの戦後史と、その戦争観の変容に迫る。
目次
序章 陸軍将校の戦後史を紐解く意義
第1章 偕行社の再結成
第2章 会の大規模化と靖国神社国家護持運動
第3章 「歴史修正主義」への接近と戦後派世代の参加
第4章 同窓会から政治団体へ
終章 「陸軍将校の反省」の可能性と限界
著者等紹介
角田燎[ツノダリョウ]
1993年、東京都東久留米市出身。立命館大学大学院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。立命館大学立命館アジア・日本研究所専門研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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