内容説明
目前の机のような「中間サイズの物質的対象」、生物・物質・人工物の「種」、現実世界と事物のあり方が異なる「可能世界」、小説のキャラクターといった「虚構的対象」について論じる、四つの講義を所収。
目次
第1講義 中間サイズの物質的対象(物質的構成の問題;通時的同一性の問題―変化と同一性)
第2講義 種に関する実在論(種に関する実在論;種と同一性 ほか)
第3講義 可能世界と虚構主義(様相概念と可能世界;様相の形而上学 ほか)
第4講義 虚構的対象(基本的構図;現代の実在論的理論)
結語にかえて―イージー・アプローチと実践的制約
著者等紹介
倉田剛[クラタツヨシ]
1970年生まれ。慶應義塾大学文学部卒。パリ大学第12校DEA課程を経て、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在は九州大学大学院人文科学研究院准教授。専門はオーストリア哲学、分析形而上学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ
7
前巻より扱われる問題自体がより発展的になり、対象の同一性問題、種の実在論、可能世界意味論、虚構的対象の存在論といった、英米系の議論でも特にスリリングな話題が揃っている。各講義の内容にも十分な深みがある。サイダーの四次元主義やロウの種的論理、HPC説、様相論理の初歩、プリーストの非コミットメント型マイノング主義など、ディープな話題まで分かり易く紹介している。この内容と分かりやすさで200頁未満とは驚異的。2022/02/05
nizimeta
7
可能世界の虚構主義や虚構的対象に関する箇所は面白かったが、種の実在論への批判側(反実在論)の記述が少なかったという印象を持った。この辺のトピックスについては生物学の哲学で積読している書籍(『セックスアンドデス』と『進化論の射程』)があるのでいずれ補完しておきたい2018/07/17
センケイ (線形)
3
上巻での宣言通り個別具体的な内容で、目次の内容にピンときたら打ってつけと言えるだろう。虚構というと単にキャラの話に見えるがそうではなく、数学や音楽的記号の(対象としての)意味についても対応可能な、なかなか汎用性のある議論だった。また、中間レベルの存在についても、つきつめて考えるとつい分子レベルや森羅万象に目が活きがちな中で、有限の大きさの(あるいは手近な)ものの存在をうまく取り扱う、エキサイティングな内容だ。2018/09/30
引用
2
自分でも論証が追えるほどには大変分かりやすいのだが、なぜ実在的な対象が実在的なのかが相変わらずよく分からない。虚構的対象と何が根本的に違うのかということに興味がある。2020/08/03
kkanamura
2
現代存在論講義の第二巻。筆者も述べている通り第一巻を総論とすれば各論的であり、メタ存在論的であった第一巻と比べると可能世界や虚構主義など、より具体的に踏みこんでいる部分が多い。難解な点もいくつかあり、それは欄外の注やコラム部分が第一巻と比べて非常に長くなっていた事からも見てとれる。また、第一巻と比べて筆者の考えが強く出ている記述が多かった。一方で先述の通り、より具体的な題材について書かれているため、現実に適用しやすい議論が多くこちらの方が読みやすいという人もいるだろう。巻末に読書案内があるのも良かった。2018/06/29