出版社内容情報
◆映画は移民のアイデンティティ形成にどう関わったか
いま移民・難民問題が注目されています。日本はこの問題に冷たいとも言われますが、戦前の日本は移民(棄民?)に積極的でした。特にアメリカへの移民はさかんでした。本書は、アメリカへの日系移民の歴史を、映画を通してたどったものです。戦前の日本人町で、どのような(日本)映画が上映されていたのか。どのように制作され、どのように受容されたのか。それが日米開戦でどう変わったのか。押収された日本映画を米軍はどのように利用したか、その補償は? また、日本映画に対する一世と二世の違いは、などのさまざまな問題を通して、映画が移民のナショナル・アイデンティティの構築と変容に果たした役割を問います。
映画と移民 目次
はじめに
第一部 「映画と移民」研究の居場所
第一章 国民国家の枠組みを超えて
1 エスニック研究の場合
2 日本学の場合
3 映画学の場合
第二章 「同化」物語からの解放
1 アメリカ映画の支配に対するユダヤ系移民の抵抗
2 イタリア系移民の「歴史映画」受容とナショナル・アイデンティティ
3 アフリカ系アメリカ人の「大移住」とオルタナティヴな映画受容
第二部 日本人移民による日本映画受容
第三章 一九一〇年代のアメリカにおける日本映画上映
1 混ざり合う複数の観客層
2 日本人移民の悪習を戒める「同化論」
3 日本人経営の劇場という場
4 日本映画興行と不安定な観客性
第四章 一九二〇年代における日本映画上映の多元的機能
1 日本映画配給網の制度化
2 日本映画専門館「富士館」の誕生
3 北米における活動弁士と巡回興行
4 「エスニック経済」としての映画興行
5 宗教と映画上映の政治学
第五章 一九三〇年代の日本映画上映運動と「人種形成」
1 伴武による日本人独立教会の設立
2 〈日本民族〉の境界とアメリカ化
3 日本映画フィルムの接収と発見
第三部 日本映画フィルムのゆくえ
第六章 真珠湾攻撃以降のアメリカ政府による日本映画接収
1 総力戦と敵性財産の管理
2 日本映画接収の経緯
3 日本映画の軍事利用
4 終戦後における日本映画の返還要求
5 日本映画の〈里帰り〉
第四部 日本人移民による映画制作
第七章 一九一〇年代の日系移民による映画制作
1 成沢玲川によるメディア戦略
2 日米フィルムと〈われわれ〉の物語
第八章 日本語トーキー映画『地軸を廻す力』と〈真正な〉日本語
1 『地軸を廻す力』の制作から公開まで
2 トーキー初期におけるハリウッドの世界戦略
3 子鴉やいまだ憎まるるほど鳴けず
おわりに
注
あとがき
主要参考文献
事項索引
人名索引
図版出典一覧
装幀―難波園子
内容説明
アメリカで日本映画を見るとは?ナショナリズムを超えて。二十世紀のニューメディア・映画は、「国民」をつくるメディアでもあった。しかし、アメリカに渡った戦前の日本人に、映画はどのような役割を果たしたのか。日本映画がつくった移民のトランスナショナルなアイデンティティを、一次資料を駆使して初めて明らかにする。
目次
第1部 「映画と移民」研究の居場所(国民国家の枠組みを超えて;「同化」物語からの解放)
第2部 日本人移民による日本映画受容(一九一〇年代のアメリカにおける日本映画上映;一九二〇年代における日本映画上映の多元的機能;一九三〇年代の日本映画上映運動と「人種形成」)
第3部 日本映画フィルムのゆくえ(真珠湾攻撃以降のアメリカ政府による日本映画接収)
第4部 日本人移民による映画制作(一九一〇年代の日系移民による映画制作;日本語トーキー映画『地軸を廻す力』と“真正な”日本語)
著者等紹介
板倉史明[イタクラフミアキ]
1974年、熊本市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。現在、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授、専門、映画学。博士(人間・環境学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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