内容説明
意識とは情報処理なのか?現代脳研究の成立基盤を問いなおし、「心とは何か」に迫る科学の発展と限界を33のキーワードで読み解く。
目次
はじめに 「意識の科学」はなぜ困難なのか―そもそも「科学」とはなんだろうか?(心身問題―「意識の科学」をめぐる古典的難問;科学の対象としての意識―科学は「一般性」を捉える ほか)
1 心をコンピュータにたとえる―計算機は心を持つか?(コンピュータはなぜ「計算している」といえるのか―計算機の思想と基本的な仕組み;中国語の部屋―コンピュータは「意味づけ」をしない ほか)
2 心の仕組みと脳の仕組み―脳は計算機か?(観念連合説―近代経験論哲学の(負の?)遺産
認知心理学―心はプログラム ほか)
3 決定論と自由意志―自由意志は幻想か?(皇帝の新しい心―自由意志は量子力学と関係があるか;動機を与える感情―「自由意志」は不自由なものとして到来し、必然的に決定される ほか)
おわりに エピステモロジーの立場
著者等紹介
山口裕之[ヤマグチヒロユキ]
1970年奈良県に生まれる。1999年東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻(思想文化)哲学専門分野博士課程単位取得退学。2002年博士(文学)学位取得。現在、徳島大学総合科学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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オザマチ
6
ニューラルネットワークや画像診断は工学系の自分から見ても馴染み深いものだが、それらの限界を知ることができた。ニューラルネットは脳や神経細胞をモデル化したものだが、完璧に動くモデルを作っても意識がどう生成されるかを知ることはできない。画像診断は人間が行動した時に脳のどの部分が活動するかを知ることができるが、どの部分が活動するかという位置を知っても、それらの機能を説明したことにはならない。脳を研究するには、まだまだ色々な視点からの考察が必要なのだろう。2015/01/31
デコボコ
4
自然科学と哲学の両方にかなり誠実な、示唆に富む良書だと感じました。2015/08/16
Humbaba
4
科学によって私たちは多くのことを知り、多数の利益を教授できている。だからこそ、科学を完全に否定することはできない。しかし、その科学も万能というわけではない。科学に何ができて何ができないのか。それをしっかりと認識することが大切である。2010/04/15
愛楊
2
2009年。認知哲学という広い分野を一人で書かせるべきではなかっただろう。コンディヤック研究者が認知哲学を書いたらこうなるよねというだけで、それ以上の含意がない。独自研究であり、ワードマップに求められる展望的な入門書ではない。今から見れば全く誤っている論。2025/04/01
yu-ente-isra
1
意識、心、脳、認知などをキーワードに哲学や科学的な立場から考察している。ボトムアップの人工知能に興味があったので読んでみたが、普段、脳が何をしているのか?という素朴な疑問を様々な角度から丁寧に解説してて興味深かった。某人気ライトノベルで量子コンピューターの開発によって人間と同等の人工知能が現れていたけど、この本を読む限り、まだそれは難しそうと感じた。計算能力の向上だけで脳と同等のものが出来上がりはしなさそう。2017/03/12