出版社内容情報
「生きられた法」とは、国家の法による一元的な支配とは異なり、国民国家、民族、土地、労働、生活環境から何重にも締め出されながら、人びとが自らの規範に従って生活実践を集積することによって生成されていく、相対的に自律した独自の社会的制度体(秩序)である。日常の生活実践において獲得された論理や知識にあくまで準拠して「生きられた法」は生成されてきたのであり、それが実定法そのものを裏切って法を再生成していく。(「第1章」より)
内容説明
大阪国際空港(伊丹空港)の中にある中村地区は、約150世帯400人の在日の人びとが暮らす、日本最大規模の「不法占拠」地域である。2002年、国と伊丹市によって移転補償が決定し、真新しい共同住宅へ集団移転することになった。中村地区の生活誌を丹念に掘り起こして人びとの「生きられた法」をすくいあげ、公共性を組み替える「寛容な正義」を説く。
目次
第1章 不法と剥き出しの生
第2章 「合法/不法」の脱構築と「正義」の再構築
第3章 「不法占拠」の系譜学
第4章 「不法占拠」地域の移転補償と公共性
第5章 法に組み込まれた「物語」
第6章 剥き出しの生にあらがう人びと
第7章 生きられた法
著者等紹介
金菱清[カネビシキヨシ]
関西学院大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。現在東北学院大学教養学部准教授、社会学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Nさん
2
映画『焼肉ドラゴン』で、伊丹空港の在日朝鮮人「不法占拠」問題を知った。本書は一連の問題の経緯と解決の流れを通じて、如何にして「不法占拠」が「法」の壁を乗り越え、移転補償を勝ち得たのかを、哲学的概念を用いて考察する。労働力として空港建設に関わりながら集住を始めた彼らが「法」を逸脱したのではなく、戦後「法」によって逸脱を余儀なくされた状態こそが「不法占拠」だったのである。国と住民を繋ぐ伊丹市(自治体)の「騒音問題」を逆手にとった解決策など。その地に「生きられた法」の正統性を構築する戦略書としても読めるだろう。2019/09/01
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