出版社内容情報
文化はどのようにして進化するか。文化の普遍性と多様性をどう理解するか。文化をなす信念や規範、芸術、習慣などの観念や表象は「感染する」とスペルベルは言います。特定の人に感染する観念もあれば、集団全体を侵す表象もあり、この過程が進行するなかで、人間も、環境も、そして観念や表象自体も変形していきます。文化の動態を理解するとはこのような感染の原因と結果を理解することだ、というのが本書の主張です。大胆な自然科学的思考ですが、その背景には発展著しい認知科学や進化心理学の知見があり、粘り強い思考でありうべき誤解や反論に周到に答えつつ、人文社会科学を真に科学的なものにする道筋を明らかにした力作です。
ある個人の脳に生まれた観念が、それに類似するいわば子孫を、他人の脳の中に生み出すことがある。観念は伝染することがあるし、ある人物から他の人物へ伝えられることによって、増殖することさえある。ある種の観念 -- たとえば、宗教的信念、料理のレシピ、あるいは科学的仮設 -- は効果覿面に増殖し、さまざまなヴァージョンの形をとって、個体群全体に恒久的に浸透するような結果を招くことがある。文化とは何よりもまず、そのような伝染性の観念からできているのだ。文化はまた、人間が作り出したあらゆるもの(たとえば、書かれたもの、手工藝品、道具、その他)から成っていて、それらが人間集団の共有する環境にそなわっていることが、観念の増殖効果を可能にしている。
したがって、文化を説明するということは、特定の観念がなぜ、そしていかにして感染するのかを説明することである。この問いに答えるには、本物の表象の疫学(epidemiology of representation)を発展させる必要がある。(本文より)
内容説明
たとえば『赤頭巾ちゃん』の物語を楽しむとき、あるいはレシピに従って料理をつくるとき、コミュニケーションの観点から見ると何が起こっているのか?なぜある言明を、十分に理解していない、あるいは経験に裏付けられていないのに信じることができるのか?「表象の感染と変形」という疫学モデルによってこれらの問題を考察し、文化の成り立ちと伝播に関わる謎に迫る。
目次
第1章 人類学者として真の唯物論者になる方法
第2章 文化的表象を解釈することと説明すること
第3章 人類学と心理学―表象の疫学のために
第4章 信念の疫学
第5章 文化の進化における淘汰と誘引
第6章 心のモジュール性と文化的多様性
結論―リスクと賭け
著者等紹介
菅野盾樹[スゲノタテキ]
1967年東京大学文学部(哲学)卒業。1972年東京大学大学院博士課程(哲学)修了。東京大学文学部助手、山形大学教養部助教授を経て、現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。博士(人間科学)
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