出版社内容情報
現代のフェミニズム理論は女性の内なる差異の追求から「他者を抑圧する差異」への認識を深め、経済的、社会的、文化的につくられてきたあらゆる形の支配・差異・抑圧の関係に注目します。この視線はまた、既成の学問諸領域にも浸透して女性学という新しい領域横断的な学問分野を生み出しました。本書は、こうした現代フェミニズム・女性学の進展を支える理論的根拠を原理的な立場から緻密に検討し、差別と抑圧の全ての関係の根絶をめざす根本的ヒューマニズム、共存的フェミニズムへの道を開こうとするものです。
このように、女性を封建的な家族制度から解放したかに見えた近代社会が、実は女性を社会的生産から閉め出すことによって賃金労働から切り離された〈専業主婦〉として家庭という「私的領域」に囲い込み、その社会的役割の価値を低下させてきた認識が、第二波フェミニズムにおいて重要な位置をしめている。したがって今日、フェミニズムという語は、女性抑圧の廃止を“家族”や“産む性”という基点に立脚して近代社会の構造や資本制生産様式のあり方を直すことによって実在する女性解法論という意味で用いられているといえよう。(「プロローグ」より)
・「女性展望」2000.3月
・「図書新聞」2000.5.20 吉澤夏子氏評
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【関連書籍】
『 フランスから見る日本ジェンダー史 』 棚沢直子、中嶋公子編 (定価3360円 2007)
『 ジェンダー家族を超えて 』 牟田和恵著 (定価2520円 2006)
『 アイデンティティの権力 』 坂本佳鶴恵著 (定価3675円 2005)
【新 刊】
『 ワードマップ エスノメソドロジー 』 前田泰樹ほか編 (定価2520円 2007.8月)
内容説明
女性の「内なる差異」の追究から共存的フェミニズムへの道をひらく。
目次
第1章 女性学の歴史とフェミニズム理論の変遷
第2章 フェミニズム理論の基本的視座
第3章 「経済的依存性」とジェンダー
第4章 ロールズの「正義論」とフェミニズム
第5章 性差研究の変遷と近年の動向
第6章 フェミニズム理論の新しい動向と今後の展望